2009年02月08日
小池真理子『無伴奏』

「私はただひたすら、かつての自分を思い出し、かつての自分をモデルとして使いながら、時代をセンチメンタルに料理し、味わってみようと試みた」と「無伴奏」のあとがきで、小池真理子さんは綴られています。実際に1960年代の終わり、仙台の高校に通われていた小池さん。主人公の響子は、自分とほぼ等身大の人間を設定して書かれたそうです。さらに「無伴奏」も当時、仙台にあった喫茶店。81年まで営業し、今でも語り継がれている伝説の名店です。小説「無伴奏」は、バロック音楽を聴きながら読むのもいいのでは。荘厳でありながらどこかに切なさを秘めているその響きが、物語の結末を予感させます。

...前に戻る