2009年10月11日
阿川弘之
『きかんしゃやえもん』 
(岩波書店)

「きかんしゃやえもん」は読んだことがあっても、作者が阿川弘之さんだと知っている人は意外と少ないのでは。名作はその作品そのものの存在感が大きいため、誰が書いたかを越えてしまうものなのかもしれません。しかしこの絵本には、阿川弘之さんの機関車への深い愛情があふれています。子供の頃、広島駅のそばに住み、夜となく昼となく列車の音を聞き、機関車の吐き出す煤煙の匂いを嗅ぎながら大きくなったという阿川さん。それが絵本「きかんしゃやえもん」の原点になっています。「しゃっしゃっしゃくだ」など楽しい擬音がいっぱいなのも、阿川さんが子供の頃から列車の音に親しんでいたから。そしてその楽しさは刊行から50年たった今も変わりません。

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