2009年11月01日
中沢けい
『楽隊のうさぎ』 
(新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

文化祭のシーズンにちなんで選んだ1冊「楽隊のうさぎ」。主人公は、克久という少年です。彼は引っ込み思案の性格ですが、中学に入ってすぐに先輩から勧誘され、吹奏楽部に入ることになります。そこで待っていたのは全国大会を目指す練習の日々。戸惑いながらも克久は、音楽に夢中になっていきます。藤丸由華さんのように吹奏楽部だった人はもちろん、音楽とは縁のない中学時代を送っていた人にもあの頃が懐かしくなるような小説。「もがけばもがくほど音楽が好きになっていく過程が読んでいて楽しい。」と小川洋子さん。そして音楽と同時に人が好きになっていく克久の心の成長が清々しく描かれています。

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