2010年10月03日
吉田篤弘
『つむじ風食堂の夜』
 (ちくま文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今週取り上げたのは吉田篤弘さんの小説「つむじ風食堂の夜」。小川洋子さんもお気に入りの1冊です。物語の舞台は、「月舟町」の十字路にぽつんと明かりを灯す食堂。その店の暖簾には名前がありません。十字路にはいつもつむじ風がくるりと廻っていたので、いつしか「つむじ風食堂」と呼ばれるようになりました。無口な店のあるじと食堂に集う人たち。人工降雨の研究をしている主人公をはじめ、二重空間移動装置を持つ帽子屋さんやイルクーツクに行きたいと言う果物屋さんなど、ちょっと風変わりだけれど心温かな人達が、今夜も「つむじ風食堂」で語り合っています。

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