2011年09月18日
フィリップ・クローデル
『リンさんの小さな子』
 (みすず書房)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

現代フランス文学を代表する作家・フィリップ・クローデルが、2005年に発表した小説「リンさんの小さな子」。主人公のリンさんは、戦争で息子夫婦を失い、孫娘とともに異国にやってきた移民の老人です。知り合いもなく、言葉もわからない国で不安な日々を送るリンさん。しかし毎日出かける公園のベンチでバルクさんという人物に出会います。言葉が通じないのに、会話ができ心が通い合う二人。「言葉がないからこそ伝わることが沢山あるということを、言葉で書いた小説」と小川洋子さん。「自分がこの小説を書いたのだったらどんなにいいだろう」と小川洋子さんが感じるほど魅力的な小説です。

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