2011年12月04日
内田百
『サラサーテの盤』
 (ちくま文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今年没後40年となる内田百閨B小川洋子さんと同じ岡山県出身。生まれ育った場所が100メートルしか離れていなかったということで、小川さんにとって特別な存在の作家です。今回取り上げた「サラサーテの盤」は、特に小川さんのお気に入りの百閭潤[ルド。死んだ友人の奥さんが、主人公のもとにやってきて、夫の遺品を返してほしいと言う不思議な物語です。昭和23年、内田百閧ェ59歳の時に発表した短編小説。この作品について三島由紀夫は「恐怖の名品」と称えています。小川洋子さんも、不気味のツボのド真ん中にはまる小説だとか。本来、言葉が届かない場所を内田百閧ヘ絶妙なタッチで描き出していきます。

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