2012年06月24日

バージニア・ウルフ
『ダロウェイ夫人』
 (光文社古典新訳文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

イギリスの作家バージニア・ウルフが1925年に発表した小説「ダロウェイ夫人」。物語の舞台は、第一次世界大戦が終わってまもなくのロンドン。6月半ばのある朝、主人公のクラリッサ・ダロウェイは、夜に開くパーティのために、花を買いに出かけます。すがすがしいロンドンの町を歩きながら、彼女の心には現在から過去へ、様々な想いが行き来するのです。実はこの小説、読み始めてすぐにはなかなか入り込めないもの。というのも視点や主語がどんどん変化するからです。時と場所も自由自在に移動していく。しかし不思議なことに読み続けていくと、バージニア・ウルフが追い求めている世界に読者も自然と入っていけるのです。

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