2014年04月20日

岩城けい
『さようなら、オレンジ』
 (筑摩書房)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

昨年、太宰治賞を受賞し、今年の芥川賞の候補にもなり、今月のはじめには大江健三郎賞も受賞した岩城けいさんの小説「さようなら、オレンジ」。小川洋子さんがこの作品にはじめて出会ったのは太宰治賞の選考委員としてでした。群を抜いてひかれるものがあり、芥川賞選考の時にも強く推薦したそうです。主人公はアフリカ難民としてオーストラリアに渡ってきたサリマという女性。子供を抱えて朝3時からスーパーで黙々と働いています。この小説の魅力のひとつはやはりサリマの存在。自分の境遇を嘆くことなく、言葉を学びながら社会に溶け込もうとしています。

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