2014年05月18日
檀一雄
『美味放浪記』
 (中公文庫)

「美味放浪記」の国内篇で興味深いのは太宰治とのエピソード。二人で旅や食事をした思い出が綴られています。もともと檀さんは太宰治の作品に強くひかれ、昭和8年、実際に会った時「君は天才だ、たくさん書いてほしい」と言ったとか。その後、二人の結びつきは強くなり、太宰治の小説「走れメロス」が生まれたのも檀さんとのあるエピソードがきっかけでした。また「美味放浪記」の海外篇で楽しみなのはポルトガル。檀さんが1年半ほど暮らしていたこともあり、ポルトガルのどんな部分にひかれたのかも感じることができます。もともと放浪癖のある檀さん。日本や海外を旅して美味しいものを追い求めてはいますが、それでも心には常に空洞を抱えていたのかもしれません。

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