2015年10月04日

吉田健一
『金沢』
 (講談社文芸文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

明治に生まれ、昭和に数多くの作品を発表した作家・吉田健一。イギリス文学者として翻訳も手掛け、また「食べること」「お酒を飲むこと」そして石川県の金沢をこよなく愛していたことでも知られています。今回取り上げた「金沢」は、吉田健一のその想いも感じる小説です。刊行されたのは昭和48年。物語の主人公である内山という男が「金沢」に一軒家を持つところからはじまります。数ヶ月に数日滞在し、静かな日常を淡々と送るために持ったという家。内山はその場所で地元の骨董屋に世話をしてもらいながら、金沢のご馳走を食べ、酒に酔い、温泉にはいり、様々な形でこの町を味わっていきます。

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