2015年10月04日
吉田健一
『金沢』
 (講談社文芸文庫)

のちに総理大臣となる吉田茂の息子として明治45年に生まれた吉田健一。子供の頃は、パリ、ロンドンなど海外で育ち、その後、イギリスのケンブリッジ大学に留学していたこともあります。熱中して読んだもののひとつがシェイクスピア。のちに「シェイクスピア」の文芸評論を発表して読売文学賞も受賞しています。「金沢は外国語の中で育ち、特殊な言語体験をした人が書いた小説」と小川洋子さん。また比較文学者の四方田犬彦さんも解説で「文体の磁力に誘われるままに、なにもかもが曖昧なままに前方へと進むことを促される」と書かれています。特殊な文体で人間の意識を流れるままに描写することで、「金沢」の不思議な世界が完成しているのかもしれません。

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