2015年11月29日

小野正嗣
『九年前の祈り』
 (講談社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

小野正嗣さんの小説「九年前の祈り」。今年の1月に第152回「芥川賞」を受賞した作品です。主人公は35歳になる「さなえ」という女性。半年ほど前、幼い息子の「希敏」を連れて、東京からふるさとである海辺の小さな集落に戻ってきています。「希敏」の父親はカナダ人。しかしある日、二人の前から姿を消してしまいました。人とコミュニケーションを取ることが苦手な息子に翻弄されながら、「さなえ」が思い出すのは九年前のこと。「みっちゃん姉」と呼ばれる女性とカナダ旅行に参加した際、「みっちゃん姉」から聞いた言葉です。九年前の記憶が「さなえ」の今と結び付いた時、悲しみが優しくなぐさめてくれるのです。

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