2016年5月15日

呉明益『歩道橋の魔術師』
 (白水社エクス・リブリス)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1960年代から90年代のはじめまで、台湾の台北市にあった「中華商場」という商業施設。8棟ある建物は歩道橋で結ばれ、人々が行き交っていました。「歩道橋の魔術師」はこの「中華商場」を舞台にした連作短編集。作者は台湾の若手作家のひとり呉明益です。彼の両親は「中華商場」で靴屋を営み、彼自身もこの場所で子供時代を過ごし21歳まで暮らしていました。「歩道橋の魔術師」の主人公も靴屋を営む家で生まれた少年。彼は母親から、歩道橋の上で靴ひもと中敷きを売るように言われます。すると少年の向かいでひとりの男が商売の準備をはじめました。それが魔術師。少年は魔術師が売るマジックの道具に夢中になっていきます。

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