2016年5月15日
呉明益『歩道橋の魔術師』
 (白水社エクス・リブリス)

少年時代の切なさが描かれている表題作「歩道橋の魔術師」をはじめ、全編にわたって登場する魔術師。彼はマジックで子供たちを魅了し、時にはありえない出来事を起こします。「九十九階」という短編小説には、子供たちが中華商場の女子トイレにエレベーターとそっくりのボタンを描くエピソードが出てきます。魔術師が近づくと、その空想のエレベーターは本当に動き出すのです。魔術師に出会うことで自分の知らなかった新しい世界に踏み込んでいく中華商場の子供たち。彼らの未来に待っていたものは何だったのか?そして魔術師は何者だったのか?そのすべてが幻のように中華商場とともに消え去っていきます。

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