2016年5月29日

津島佑子
『光の領分』
 (講談社文芸文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今年の2月、作家の津島佑子さんが68歳で亡くなりました。太宰治の娘として知られていますが、もちろん作家としても生前たくさんの作品を発表され、様々な文学賞を受賞されています。そのひとつが「光の領分」という初期の連作短編集。1979年に野間文芸新人賞を受賞されています。最初に掲載されている物語は、表題となっている「光の領分」。離婚を決意した女性が、幼い娘を抱えて二人暮らしをはじめています。その住んでいる部屋は、四階建ての古いビルの最上階。四方に窓があり、昼間のどの時間も光で充たされています。光がキーワードになっている小説。光はこの親子を守り、時には傷つけることもあるのです。

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