2016年11月13日

円地文子
『鬼』
 (ちくま文庫「名短篇、ここにあり」)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

明治に生まれ、戦前戦後を代表する女流作家の円地文子さん。子供の頃、病弱だったため、国語学者だった父親の個人教授を受け、早くから演劇や古典文学に親しみます。作家としてもまず「源氏物語」の現代語訳で評価され、その後昭和28年に「ひもじい月日」で女流文学者賞。昭和32年に「女坂」で野間文芸賞を受賞しています。今年は没後30年。短編小説「鬼」で、円地文子さんの文学の世界を味わってみました。物語の語り手である私が、土岐華子という編集者のことを思い出しながら話をすすめていきます。実は彼女の結婚の行く手には、邪魔をする何かがいつもいて、その存在が「鬼」ではないかという不思議な物語です。

...続きを読む