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2017.02.11 Sat

映像とは何だろう?恵比寿映像祭・岡村恵子

今回は、恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館で開催中の『第9回恵比寿映像祭』をご紹介します。東京都写真美術館の学芸員で『恵比寿映像祭』のディレクター、岡村恵子さんにくわしい話を伺いました。

小宮山雄飛さんのリポートです!




■テーマは『マルチプルな未来』。



『映画祭』はよく耳にしますが、『映像祭』とはどんなフェスティバルなのでしょうか?

岡村恵子さん
「ひと口に映像と言っても幅広いものが含まれますが、映画館で観るものだけではない、さまざまな映像について、観る方と作る人、さらに私たちのようなその間に立つ人間が、『映像とは何だろう?』ということを一緒に考えていく。『映像祭』は、そのためのホームベースみたいなところです。

写真と映像の美術館として、東京都写真美術館は今年20周年。映像祭を立ち上げた頃は、解像度の高い映像が普及してきたり、デジタル化によって映像が身近になり、手軽に映像を作ったり発信できるようになった時期です。そんな中で、映像による表現やアートの在り方が変わってきたので、これからの映像をどう考えていったら良いか、そのためには今までの映像はどんな物だったんだろう?ということを考えていくために〈映像祭〉をスタートさせました」


今回は9回目。これまで、どんな変化がありましたか?

岡村恵子さん
「最初の頃は、例えば解像度が高いということだけでも表現の目玉になっていましたが、今やご家庭で4Kや8Kの時代。逆に若い方たちには、アナログのフィルムや、古いビデオテープが新鮮に見えるので、そこから新たな表現の可能性も見い出して行ければいいと思います」



今年の映像祭のテーマは?

岡村恵子さん
「今年のテーマは『マルチプルな未来』(マルチプル……多数、複合的な、という形容詞)。今の時代、オリジナルがあってコピーを取るのではなくて、マルチプルに存在すること自体が当たり前の表現があると思います。例えばCDは、音源が元々あってもCDとして発売された物がオリジナルです。『マルチプル』には、『同じ物がたくさんある』という意味と、『いろんな物が複合的に重なり合ってひとつを作る』という二つの意味があります。世界のグローバル化やネットワーク化など、いろいろな物が繋がり合っていることを考えるきっかけになるキーワードかな、と」


どんな作品があるのでしょうか?

岡村恵子さん
「15日間の会期で、全館を使って展示しています。一階の映画館では、多様な映像作品を日替わりで上映します。注目は、森村泰昌さん。いろんな人になりきるポートレート作品をたくさん手掛けている、アート界では非常に有名な方、巨匠です。マルチプルに自分を増殖させる意味では、代表的な作家さんです。他には、ライブ・パフォーマンスもあります。オーストラリア出身で、非常に注目されている双子の姉妹のアーティスト、ガブリエラ・マンガノ&シルヴァーナ・マンガノ。大きく展示された彼女たちの作品の前で、モチーフになっている女性たちのパフォーマンスが行われます」

森村泰昌
www.yebizo.com/jp/artist/detail/1

パフォーマンス:ガブリエラ・マンガノ&シルヴァーナ・マンガノ《そこはそこにない》
www.yebizo.com/jp/program/detail/02-02


■楽しんでいただけるプログラムがたくさんあります。



映像作品以外の催し物もあるそうですね。

岡村恵子さん
「みなさんに楽しんでいただけるプログラムがたくさんあります。カジュアルなトーク、主題を掘り下げていくようなシンポジウムやレクチャー。後半には、二日間にわたってライブ・イベントもあります。16mmフィルムを使ったライブ上映のパフォーマンス、ラジオやカセットテープを使ったサウンド・パフォーマンスです。

また、恵比寿ガーデンプレイスの中央にある吹き抜けの空間『センター広場』では、アーティストの金氏徹平さんが初めて屋外展示に挑みます。古い遊園地にあったオブジェなどを組み合わせて再構成しているので、アートに馴染みがない人にも親しんでいただける面白い作品です。お買い物のついでに!」

オフサイト展示:金氏徹平《White Discharge(公園)》
www.yebizo.com/jp/program/detail/07-01




近隣のギャラリーやショップも巻き込んで、街ぐるみで開催されているのが『恵比寿映像祭』の大きな特徴でもあります。そんな地域連携プログラムのひとつが、『ダンス保育園 ! !』。これはいったい……!?

ダンス保育園・園長 住吉智恵さん
「子育て世代のダンサーやアーティストは、子どもを育てながらエネルギッシュに活動している方が多いです。また、観る方にも子育て中だからといって芸術鑑賞をあきらめてほしくないので、いろいろなフェスティバルと連携し、ダンサーやアーティストがワークショップやパフォーマンスを行うプロジェクトを立ち上げました。

今回の『ダンス保育園』では、一時託児のスペースも設けています(要予約)。その隣で、ダンサーたちが子どもたちと一緒にワークショップやパフォーマンスを繰り広げます。ダンス未経験でも大丈夫です。今回は、坂本美雨さんが歌と演奏でみんなをバックアップしてくれます。生演奏で踊れます!」

地域発信プロジェクト:ダンス保育園 ! !(2/25のみ)
www.yebizo.com/jp/program/detail/10-04


■未来の映像を創る人たちが、どんどん生まれてくる。



恵比寿映像祭が考えるこれからのワクワク、教えてください!

岡村恵子さん
「映像とは何か?……と9回もやっていますが、答えなんて当然出ません。最初の頃、高校生・大学生だった方たちが作家になって『昔、観てました』と声をかけてくださるんです。映像祭を毎年繰り返していくことによって、未来の映像を創る人たちがどんどん生まれてくることが、一番楽しみです。ワクワクしています」


恵比寿映像祭
www.yebizo.com/jp/


〈本日のオンエア曲〉
Bus In These Streets' / Thundercat
ノスタルジア / 坂本美雨 with CANTUS