野菜にエタノールを与えて 気温が高い環境でも安定して成長させる研究
オンエアレポート
2025.09.11

提供:理化学研究所
今回は、こちらに注目します。
「野菜にエタノールを与えて 気温が高い環境でも安定して成長させる研究」

今回のイノベーターは、理化学研究所・環境資源科学研究センターの関原明(せき・もとあき)さんです。

提供:理化学研究所
野菜にエタノールを与えて、気温が高い環境でも成長させる研究。
こちらは、どのような思いがあって、始めたのでしょう?
「最近の夏の猛暑は異常で、野菜などを今まで通り育てることが難しくなってきています」
「困っている農業従事者のお役に少しでも立てれば、という思いから始めました」
野菜にエタノールを与えると、気温が高い環境でも安定して成長することは、
どのような実験で分かったのでしょうか?
「3週間ほど育てた若いレタスの苗にあらかじめエタノールを与えておくことで、
気温が高い環境でも、水だけを与えたレタスと比べて、元気に育つことが分かりました」
「この“気温が高い環境での栽培”は、ビニールトンネルの中で、
日中の気温が最大で35-40度にもなるような条件のもと、約100日間にわたって行いました」
「エタノールの与え方は、まず0.1%に薄めたエタノールの水溶液にレタスの苗を3日間、浸し、
その後は2週間に1回、同じ濃度のエタノール水を与えるという方法です」

提供:理化学研究所
そもそも、エタノールに注目したのは、どうしてなんですか?
「我々の研究室で、植物に環境ストレス耐性を強化させる新規の化合物のスクリーニングを、
ラボメンバー(当時、大学院生と特別研究員)に進めていただいていました」
「その実験を進めていく中で、化合物を溶解させる溶媒の中に
ストレス耐性を高める効果があることを示唆するデータが得られました」
「そこで、エタノールを含む溶媒について解析を進めると、興味深いことにエタノールで処理することで
環境ストレス耐性を強化できることが分かり、
これは面白いと思い、関係者と連携して、エタノールの研究を発展させました」
エタノールを与えると、野菜が安定して成長する理由としては、どのようなことが考えられますか?
「我々の発見ですが、正確に言うと、野菜に低濃度のエタノールを与えると、
気温が高い環境で“エタノール無しの条件”と比べて、安定して成長することを明らかにした点です」
「その仕組みについて簡単に説明しますと、低濃度のエタノールを与えると、
高温から細胞を守る“タンパク質”や高温を耐えぬくエネルギー源となる“糖”が作られるなど、
“植物が暑さに適応する”手助けをすることにより、植物が、気温が高い環境で、
“エタノール無しの条件”と比べて、安定して成長することが可能になります」

提供:理化学研究所
こちらの研究、今後はどのような実験をしていくのでしょうか?
「一つは、エタノールが植物を暑さや乾燥などの厳しい環境に強くしたり、
糖をたくわえる力を高めたりする仕組みを詳しく調べることです」
「この仕組みが分かると、作物の種類に合わせて、より効果的な使い方を見つけやすくなります」
「もう一つは、作物の種類や育てる場所、天気の条件に合わせて、
エタノールをどう使えば一番良いかを実験で確かめていくことです。
これには、大学や企業、農家の方々と一緒に力を合わせて取り組んでいきます」
「こうした研究を通じて、世界中の農家の方々が、暑さや干ばつに負けずに農業を続けられるよう、
少しでも、お役に立てたらと考えています」

農家さんの救世主となり得る、この研究をさらに進め、より効果的な使い方が見つかることを期待しています。