静電気を利用して リンゴの授粉を行う機械
オンエアレポート
2025.10.16
今回は、こちらに注目します。「静電気を利用して リンゴの授粉を行う機械」

今回のイノベーターは、
新潟県燕市で農業機械を開発・製造している、株式会社ミツワの鈴木道人さんです。

開発した「静電気を利用してリンゴの授粉を行う機械」は、
静電気が物に付着する、尖った所に向かっていくという特性を利用しているということです。
「最近では、塗装や農薬でも静電気を利用した製品は出ていますが、それを花粉の授粉に置き換えて、
めしべの柱頭(めしべの先端にある、花粉を受け取る部分)に花粉を効率よく、そして確実に授粉する製品です」
こちらの機械、どのように使うのでしょう?
「ミツワでは以前から、『ラブタッチ』という果樹用の授粉機を製造販売しております。
静電交配に使用する静電ノズルは、その授粉機に取り付けるオプションとなります」
「首からさげていただく、少し大きめなお弁当箱ぐらいの大きさの本体に、
静電ノズルを取り付けていただき、その先から噴射される花粉を花に狙って吹付ける使い方です」

どのような思いがあって、こちらの機械を開発したのでしょう?
「数年前から授粉するための花粉の生産量が減っています。
そして、昨今の気候変動により、マメコバチなどの授粉に役立っていた昆虫が少なくなってきているということも
問題になっていました」
「その頃から、業界では近い将来、少しの花粉で授粉作業ができる機械は必ず必要になる。
そう考えてはおりましたが、ここにきて、それを大きく加速させたのが、
去年の梨の火傷病による輸入梨花粉の輸入停止です。
それを受けて、今まで輸入できていた花粉が全く入ってこなくなりました」
「ミツワでは数年間、静電交配機を試験している中で、静電気を利用して授粉することで、授粉率が上がり、
約半分の花粉の量で今まで通りの交配作業ができるということは、事実として認識していましたので、
今だからこそ、全国の果樹農家の方々に向けて、この技術を早急に使っていただきたいと思い、
前倒しにして、去年、少量でしたが、急きょ販売しました」

この機械を使うと、どのぐらい作業時間を短縮できるのでしょうか?
「凡天を使った手作業は、花粉を付着させた凡天を1花1花、時間をかけて行う作業となります。
長時間の作業になるために、その間の温度変化であったり、急な雨などにより作業が無駄になったり、
面積が多い農家の方は、その時だけ、人を集めなければいけないなど、なかなか骨の折れる作業となります」
「しかし、この静電気を利用した交配機は、花を撫でるように、
花から少し離した位置で滑らせるような速度で作業できるので、2~3倍は作業速度を効率化できます」
この機械について、農家さんは、どのような感想を話していますか?
「今まで、凡天で交配していた方からは、機械化することでの簡単さやスピーディーさに驚いていただけました」
「また、今までミツワの『ラブタッチ』を使っていただいていた方からも、
花粉の使用量が減ったという、お言葉をいただいています」
授粉率が上がるため、使用する花粉の量を減らすことができるということです。

こちらの機械は、リンゴだけでなく、梨や桃、スモモやキウイフルーツにも使われていて、
「どの種類の果物に対しても、大幅な花粉の節約につながっている」と、お話しされていました。
果樹農家さんの負担軽減につながる、こちらの機械が、今後、さらに普及していくことを期待しています。