折り曲げられる太陽電池を利用したブドウ栽培の実証実験
オンエアレポート
2025.11.06
今回、注目するのは、こちらです。「折り曲げられる太陽電池を利用したブドウ栽培の実証実験」

今回のイノベーターは、山梨県果樹試験場 生食ブドウ栽培科の塩谷諭史さんです。
実証実験に使っている「薄くて折り曲げることができる太陽電池」は、どのような太陽電池なのでしょう?
「炭素などの有機物が主原料の半導体を利用したフィルム状の太陽電池です。
軽くて簡単に曲げられるので、様々な場所に設置できます」
「大きな特徴として、光を通すため、フィルムの下でも植物の栽培ができます。
また、従来の太陽電池と違い、半導体に鉛を含まないため、環境への負荷も小さいと言われています」

実証実験は、いつから、どのような方法で行っているんですか?
「7月下旬から、ブドウ畑の雨よけ設備に有機薄膜太陽電池を設置しています」
「日中に発電した電力で夜間にLEDライトを点灯。
ブドウ果実に向けて、夜間に青色の光を当てて、着色が良くなるか実験しています」

こちらの実証実験は、どのような思いがあって始めたのでしょうか?
「山梨県では2020年から農業分野での脱炭素化を進めています」
「有機薄膜太陽電池で発電するだけでなく、
光が決め手のブドウ『サンシャインレッド』にLEDライトを使えば、注目が集まり、
これをきっかけに『カーボンフリー農業』が広がれば、おもしろいと思いました」

サンシャインレッド
今回の実証実験について、塩谷さんは、どのようなことを感じていますか?
「実験室でなくブドウ畑で実証することで、
この取り組みを生産者の方に身近に感じていただけると考えています」
「また、今回の実証では、消費電力の少ないLEDを使用していますが、
今後、発電効率が向上すれば、電気の無い畑で他の電気設備や機械を使用できるようになり、
農作業がもっと楽になっていくと思います」

実証実験の結果は、いつごろ、分かるのでしょうか?
「今年から3年間、研究に取り組んでいます。最終的な結果は、それまでお待ちください」
「1年目の実感とすれば、有機薄膜太陽電池の下でもブドウは特に問題なく生育すること、
LED照射によって、ある程度、着色が良くなることが分かりました」
実証実験の現状をご覧になって、課題だと感じていることはありますか?
「まだ実験中ではありますが、実用化に向けては太陽電池の耐久性や発電効率、
LEDの照射方法や着色向上効果の安定性など、検討すべき項目はいくつかあります」
「これから3年間、しっかりと確認していきたいと考えています」

農作業が楽になり、農家さんの負担軽減につながる可能性がある、今回の実証実験。
3年間の研究が実を結ぶことを期待しています。
