静岡大学の研究者が発見した『果樹の休眠打破剤』
オンエアレポート
2025.11.20
今回、注目するのはこちらです。「静岡大学の研究者が発見した『果樹の休眠打破剤』」

今回のイノベーターは、静岡大学 農学部 助教、富永晃好さんです。

まずは、果樹の「休眠」について、こちらはどのような状態なのでしょう?
「果樹は冬の寒さに備えて生育を止めて、眠るような状態になります。これが『休眠』です。
一定の寒さに遭遇することで、目覚めて、春に開花します。
春になっても目覚めない症状が『眠り症』と言われて、今、問題になっています」
「人間に例えると、しっかり夜に眠りたいのに、何回も起こされて、
朝になっても眠たいままで起きることができないというのが『眠り症』になります」
「果樹の『眠り症』は世界中で深刻な問題になっています。
地球温暖化によって冬の寒さが足りなくて、芽が出ない、花が咲かない、花が咲かないと実もとれない。
実がとれないと食料が供給されないという問題になってしまいます」
こうしたなか、富永さんが研究しているのが「果樹の休眠打破剤」です。
「休眠打破剤は、果樹に春が来たことを“伝える”役割をする物質です。
私たちが発見した“物質X”は、植物ホルモンに似た作用を示すので、
その効果で芽の目覚めを促し、花を咲かせる手助けをします」
「イメージとしては、“叩き起こす”という感じではなくて、
“しっかり眠ったときと同じようなホルモンバランスに整えて、春にしっかり目を覚ます”というような化合物です」
たとえば、どのような果樹に使えるのでしょうか?
「二ホンナシをはじめ、モモ、リンゴ、ブドウなど落葉果樹全般で効果を確認しています」

休眠打破剤につながる“物質X”は、どのように発見したのでしょうか?
「眠り症を改善できる物質が何かないかということで、毎年、いろんな物質を果樹の芽にかけていたんですが、
1000種類ぐらいかけたなかで、去年の今頃に、1つだけ、ようやく見つけました」
「10年ぐらい、毎年、かけていました」
「学生さんと一緒にやっていたんですが、部屋に走り込んできて『先生、芽が動きました!』と言ってきたのが、
発見した瞬間でした」
学生さんが走り込んできたとき、どのようなことを感じましたか?
「まずは握手をしました。びっくりして、感謝の気持ちを込めて」

物質Xで眠り症が改善したナシの樹
この休眠打破剤を農家さんが使えるようになるのは、いつ頃なのでしょうか?
「現在、実証試験と安全性の評価を進めており、10年以内の実用化を目指しています」

世界中の果樹農家さんを救う可能性がある、この休眠打破剤。
安全性の確認に時間もお金もかかると思いますが、10年以内に実用化されることを期待しています。