ブドウのように“房取り”ができる新品種のブルーベリー
オンエアレポート
2025.11.27
今回は、こちらに注目します。「ブドウのように“房取り”ができる新品種のブルーベリー」

今回のイノベーターは、東京都農林総合研究センターの宮下智人さんです。

こちらの新品種のブルーベリーについて、詳しく教えてください。
「ブルーベリーは房状に果実がつきますが、房の中でばらばらに熟すので、一粒ずつ摘み取る必要があり、
収穫に労力がかかります」
「一方、今回、開発した新品種のブルーベリーでは、
房の中の成熟が比較的 揃うので、ぶどうのように房ごとハサミでカットして収穫ができます」

既存品種のブルーベリー(成熟が不揃い)
どのような品種改良で「房取り」ができるようになったのでしょうか?
「ブルーベリーには代表的な種が2つあります」
「『ハイブッシュ』は寒さに強く果実が非常に美味しい種で、『ラビットアイ』は暑さに比較的強い種です。
この2つの種を交配して、たくさんの雑種を作ったところ、その中に“房取り”に向くものが偶然、見つかりました」
『ハイブッシュ』並みに美味しく、『ラビットアイ』並みに暑さに強い東京オリジナルの品種を作ろうとしたところ、
偶然、“房取り”ができる品種ができたということです。
開発で特に大変だったのは、どのようなところですか?
「育種にはとても時間がかかり、この品種も20年かかりました」
「その間に、当初、考えていたニーズが変わってしまうこともあります。
たとえば、暑さに対する強さも、20年前の想定より、ずっと高いレベルが必要となってきています」

新品種の房取り
“房取り”ができるようになると、どのようなメリットがあるのでしょう?
「1キロの果実を収穫するのに、摘み取り収穫では20分かかりますが、
房取り収穫では4分、つまり5分の1の時間で済みます」
「ブルーベリーを摘み取ると、房の柄から外したところは穴が開いた状態になるため、
水分が抜けたり、カビが生えたりして傷みやすいです」
「一方、房取りした果実は穴がないので、保存性が良くなります。
茨城大学(講師の望月佑哉さん)で貯蔵試験を行ったところ、房取りした果実のほうが腐敗しにくく、
5か月貯蔵した果実でも美味しく食べられました」
「長期貯蔵することで生果の出荷期間を延長できる可能性があります」
新品種のブルーベリー、農家さんは栽培を始めているのでしょうか?
「2026年の春から、東京の主要な産地の生産者のところで栽培がスタートします」
「来年以降の数年間は東京での普及が優先になりますが、
そのあとは他県の希望される方も、苗木を入手して栽培していただけるようにする予定です」
「ブルーベリーのような果樹では、苗木を植え付けたあとは、
しばらく果実を付けないようにして、樹をしっかり育てる必要があります。
それには3年ぐらいかかりますので、
順調にいけば、2029年の夏ごろから果実を収穫して販売できるようになると思います」

育種で偶然、見つかった、農家さんの負担を減らしてくれる新品種のブルーベリー。
今後、栽培する農家さんが増えていくことを期待しています。