食べられるコケ
オンエアレポート
2026.10.08
今回、注目するのは、こちらです。「食べられるコケ」

今回のイノベーターは、神戸大学大学院理学研究科の石崎公庸教授です。

石崎教授は、コケ植物、特に「ゼニゴケ」を使って、植物の進化や成長の仕組みを20年以上研究。
元々は「ゼニゴケ」を、植物の進化や成長の仕組みを調べるモデル植物として研究してきましたが、
最近はその特徴を活かして、食用利用や有用成分の生産にも取り組んでいます。
――「ゼニゴケ」は、どのような形をしているのでしょう?
ゼニゴケは、普通の草のように茎や葉が立ち上がるのではなく、地面にぺたっと広がる平たい緑色の植物です。
小さな緑のリボンやシートのような形で、表面には少し模様があります。
特徴的なのは、小さなカップのような構造をつくることで、その中に次の世代になる小さな芽がたくさんできます。
――「ゼニゴケ」を“食用”という視点で研究を始めた、きっかけは?
最初から食用を目的にしていたわけではなく、もともとは植物の進化を知るためにゼニゴケを研究していました。
研究を進める中で、ゼニゴケは屋内や管理された環境で育てやすく、クローンで増やせるなど、
食材や有用成分の生産に向いた特徴を持つことが分かってきました。
そこから、社会に役立つ形で活かせないかと考えるようになりました。
――自然の中で育っている「ゼニゴケ」は食べられるんですか?
自然の中や庭、道端に生えているゼニゴケを採って食べることはおすすめできません。
野外のコケは土や水、微生物、農薬、排気ガスなどの影響を受けている可能性がありますし、
自分を守るための苦味成分や毒性のある物質をためている場合もあります。
私たちが研究しているのは、管理された環境で育てたゼニゴケです。
――管理された環境で、どうやって育てているのでしょう?
研究室では、ゼニゴケを土ではなく、清潔に管理した専用の栽培環境で育てています。
私たちは、液体肥料を少しだけ含んだ水を霧、ミストとして散布しながら育てる独自の方法を開発しました。
LEDの光、温度、湿度、栄養条件をコントロールし、
ゼニゴケにとってストレスの少ない環境で育てる点が、野外のコケとの大きな違いです。

――研究室で栽培したゼニゴケの食感や味は?
食べてみると、意外とシャキシャキした食感があります。
味は強いクセがあるというより淡白で、少し青みのある野菜に近い印象です。
レタスやスプラウトのように、食感を楽しむ食材として使える可能性があると思います。
――含まれている栄養素は?
栽培条件にもよりますが、ゼニゴケにはビタミン、ミネラル、食物繊維などが含まれています。
特に鉄分については、
私たちが調べた条件ではホウレンソウの25倍以上という非常に高い値を示したこともありました。
また、アラキドン酸やEPAなどの長鎖不飽和脂肪酸を含む点も面白い特徴です。
ただし、食品として広く利用するには、安全性や機能性について、さらに確認が必要です。
――どのように食べるのでしょう?
生では、少量をサラダに混ぜたり、料理のトッピングにしたりする食べ方が合うと思います。
シャキシャキ感があり、スプラウトやハーブに近いイメージです。
また、乾燥粉末にしてクッキーなどの焼き菓子に入れても美味しいですし、
山菜のような香りがあるので天ぷらにも向いていると思います。

(ゼニゴケのサラダ)
――「食用のゼニゴケ」の栽培に関して、現状、課題だと感じていることはありますか?
一番大きな課題は、安全性の確認と品質管理です。
食用として使うには、管理された環境で安定して育て、成分や味をそろえる必要があります。
また、「珍しい」だけでなく、多くの人においしいと思ってもらえることも大切です。
今後は、栽培コストを下げることや、大量生産に向けた方法を確立することも課題だと考えています。
――今後、食用の「ゼニゴケ」をどのようなことに活用していきたいと考えていますか?
新しい食材としての可能性に加えて、
植物工場や宇宙のような閉鎖環境での食料生産にも活用できればと考えています。
また、ゼニゴケはポリフェノールなどの有用成分をつくる力も持っているので、
将来的には「食べる」だけでなく、バイオものづくりにもつなげていきたいです。

(ゼニゴケの天ぷら)
石崎さん、ゼニゴケを食用として利用するための研究、これからも応援しています。
