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TOKYO FM

Message in the Music / Bruce Springsteen『Born In the U.S.A. - Demo Version』

ON AIR REPORT / 2022.08.15 update
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ブロードキャスターのピーター・バラカンさんが毎日1曲選曲。
時代を超えて、届く、音楽のメッセージを紐解く 「Message in the Music」

今日お届けした曲は、
Bruce Springsteen『Born In the U.S.A. - Demo Version』 (1982)

今日は8月15日、終戦記念日です。敗戦記念日と言った方がいいかもしれません。
ただ、敗戦は記念するものではありません。
その後、日本はもちろん全く戦争をしていません。
アメリカの方は何度も戦争をしていますが、あれ以来勝ったことはないと思います。
一番大きかったのはやはりベトナム戦争。
ベトナム戦争は、途中からテレビで毎晩戦争の状況が報道されるようになると、
夜のニュースをテレビで見ているアメリカ国民は、だんだん戦争に対して否定的に考えるようになっていきました。
最終的に戦争が終わって兵士たちが帰ってきたら、冷たい目で見られるようになることも多かったんですね。

そのことを歌ったのが、Bruce Springsteenの「Born in the U.S.A.」。
大ヒット曲だし、曲調だけ聴いていると、あたかも愛国心の塊のように聞こえてしまうかもしれません。
実際に何を歌っているかというと、元々何の希望もない小さな町で生まれた男は、子どもの時にいじめられてばかりいたんですね。
その人は、ちょっと法に触れることをしてライフルを渡される。
つまり、「あんた、刑務所に行くか軍隊に行くかどっちだ?」ということなんですね。
そういう人が意外に多かったんです。

英語でPoverty draft という言葉があるんですが、Poverty は貧困、Draftは徴兵。
つまり、貧困層を意図的にリクルートしたという事実もあります。
とにかく、その人は気が付いたら外国に行かされていた。
黄色い男を殺しに行かされていた。要するにベトナムの話なんですね。
そういう、いろんな理由で徴兵された普通の庶民の状況を淡々と描いた曲なんですけど、
曲調のためにすごく愛国的な歌のように響くんです。

終戦記念日にこの曲をかけるのは、ちょっと不思議に思う方もいるかもしれませんが、
僕としてはBruce Springsteenが、具体的なことをいう事によって、戦争というものの不条理をすごく雄弁に語っている、そんな気がしています。
この日にこそ、そういう曲を聴く価値があると思っています。

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