肩書きのジャンルを超える

杉山明日香さん(理論物理学博士・ソムリエ)×福岡伸一さん(生物学者)

2016

09.18


 
分子生物学者で、17世紀のオランダの画家、ヨハネス・ フェルメールを愛してやまないことでも知られる福岡伸一さんと、理論物理学博士で、ソムリエの杉山明日香さん。肩書きのジャンルを超えて活躍するおふたりに、「文系」、「理系」をキーワードにお話を伺いました。

女性の時代





福岡
物理のクラスの男女比はどのくらいでした?

杉山
博士過程の時は1学年に2人。実験系だと増えるんですが、2、3%もいなくて、かなり少ないですね。国際学会に行っても女性を探すほうが難しいですし、どこの国も同じ割合でした。

福岡
わたしはアメリカのロックフェラー大学にも籍を置いていて、一年の半分くらいはそこにも行っているんですけど、今から25年くらい前、女性教授はいなかったです。その後、客員教授として行くようになると、優秀な女性教授がいっぱい。むしろ女性のほうが多いくらいで、研究成果を出し、研究室を率いている。男性だから女性だから能力に違いがあったり、得意不得意があるわけではなくて、ただ男性が作り出した仕組みの中に女性がなかなか入りにくかっただけで、それがだんだん崩されつつあるのは間違いないですね。
理系文系の話で付け加えておくと、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞があって、長い間、男性しか受賞できず、数学は男性脳だと言われていたけど、2014年には、女性が選ばれて、それが崩れた。また、生物学の分野では、もうすぐノーベル賞を受賞すると思うふたりの女性科学たちがいて、だから、どんどん女性の優秀の人が新しい道を広げているんです。

杉山
女性の時代ですね。

福岡
女性を活用するという言い方も女性に対して失礼。別に男に活用されなくても自ら勝手にどんどん新しいことをやってくれているので、男性たちは、いばるなと思う。

杉山
そうですね。


文系?理系?





福岡
よく、文系理系という言い方があって、”根っからの文系なんで、理系のことはよくわかりません”とか言う人もいるけど、それは、あまり言わないほうがいい。”あなた文系って言うけど、文系のことをどのくらい知っているのか”と聞かれると、たじろぐんですよ。実は何もわかっていないことを自ら告白しているようなもの。

杉山
なかなか厳しい意見ですが、文系理系問わず、仕事は何に対しても一個一個段階を作って組み立てていくのが大事。それが、上手なのは理系脳だと思う。

福岡
杉山さんは、大学での専攻は?

杉山
量子統計力学が専門です。

福岡
聞いてもわかりません。その後、教育に携われて、数学、物理を教える仕事をされている。だから、文系理系の若い人たちにどういう将来像をもって勉強してもらいたいかを熱意をもって語れるんですよね。

杉山
おせっかいな性格なんですよ。小さい頃から教えたくなってしまう。中学受験を終えると次、受験する子に数のおもしろさとか仕組みを教えて、高校受験を終えるとまた、後輩に勉強を教えて、今は大人にワインを教えていて、知ったことを伝えたいんです。

福岡
 それは、寛容だよ。自分だけが知っておきたいといじわるになる人もいる中で。性格いいですよ。

杉山
共有する楽しさですよね。物理も数学も一緒に楽しめるということありますし、ワインは最たるもので、自分ひとりで飲むものとふたりでシェアするワインの味って同じものでも全然違うと思っていて、そういうのを一緒に共有したいのが、わたしの原点かと思います。


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