原点は、オタク

杉山明日香さん(理論物理学博士・ソムリエ)×福岡伸一さん(生物学者)

2016

09.25


 
分子生物学者でありながら17世紀の画家、フェルメールへの造けいが深い福岡伸一さんと理論物理学博士で、ソムリエの杉山明日香さん。ともに、ジャンルを自由に行き来しながら、ご活躍されているおふたりの原点とは?

フェルメールとの出会い





福岡
杉山さんもわたしもそうかもしれないけど、そもそも勉強するのが好きなんですよ。

杉山
そうなんですよ。先生は生物学をやりつつ、フェルメールおたくとしても有名ですし、昆虫、絵、アートなど垣根なく研究されている。

福岡
フェルメールを好きになったのも、昆虫少年として虫を集めて、この世界にどんな変わった虫がいるのか、キレイな虫がいるのかを調べていて、ある時、図書館の書庫で「微生物の狩人」という本に出会ったんです。その中に顕微鏡をはじめて作って、水の中に微生物がいることを発見したアントニー・レーエンフックさんという人の章があり、その人は、17世、オランダのデルフト生まれ。その街に同じ歳で生まれ育ったのが、フェルメールと書いてあったんです。その時は、フェルメールを追求しなかったんですけどね。

杉山
小学生でそこまで調べたんですね。先生、究極のおたくですね。


好きを突き詰める





福岡
後に、NYに暮らしながらアパートと研究所を行き来するだけで自由の女神にもエンパイア・ステート・ビルにも行ったことがなくて、NYでは、唯一、毎日違う道を選ぶのが楽しみだった。

杉山
道を変えて行っていたんですか。

福岡
そしたら、フリックコレクションという美術館があって、入ると本物のフェルメールがあったんですよ。

杉山
その小学生の時の名前の記憶があったんですか?

福岡
これがフェルメールか!といろんなことが繋がった。フェルメールの絵を見たら、写真みたいなキレイな絵で完全な遠近法で描かれていて、それまで、ピカソとかゴッホだと、オレが解釈する世界はこうだというエゴが投入されているのが芸術だと思っていたのでフェルメールみたいな公平で清明で正確な絵を初めて見てびっくりした。まるで科学者みたい。それでフェルメールが好きになったんですよ。杉山さんはワインがおもしろいと思ったきっかけは?

杉山
きっかけは、香り。九州の田舎で育ち、なんでもニオイを嗅ぐのが好きだったんです。小学校から自宅までの道のりも、花、木、葉っぱとか全部いろんなもの匂いを嗅ぎながら帰っていたんですね。

福岡
おたくの性質が現れている。

杉山
家の中のニオイも嗅ぎました。冷蔵庫のレモンと木になっているレモンの差とか無意識にやっていて。両親がワイン好きで毎晩飲んでいたので、リビングがワインの香りになって、15歳の頃から香りだけのブラインドテイストが出来ていたんです。もともとはニオイフェチからはじまっています。
よく数学、物理とワインって全く、対局にあるものをどう脳で処理されているんですかっていろんな人に聞かれるけど同じ。小さい頃から身近で好きなもので突き詰めていった結果が正直のところ。かっこつけると、たまにワインも数学も宇宙ですって答えたりしていますけど。どっちも終わりがなくて研究のテーマとしては宇宙くらい壮大だと思っているという意味で。


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