異国での音楽体験

岸田繁さん(ミュージシャン)×反田恭平(ピアニスト)

2017

07.30

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海外に行くと気がつく音楽の魅力



岸田
反田さんは何年くらいモスクワに行かれていたんですか?

反田
結果的に3年半過ごしました。楽しかったですね。

岸田
ごはんは、おしかったですか?

反田
僕は何でも食べられるので。ビーフストロガノフ、ピロシキやボルシチとかは、日本で食べるのと違ってびっくりしました。僕、ロシア語を知らないで行ったんですよ、ビザとパスポートだけ持って。最初に寮に住んだんですけど、「水」という単語もわからなかったので、水も飲めず、2日間何にも食べられなくて、もう死にそうだとなったときに隣の隣に日本人の先輩が住んでいて、「何かください!」と言ったら、ひまわりの種をもらったんです。

岸田
ひまわりの種(笑)。

反田
なので、はじめて、モスクワに着いて食べたのが、ひまわりの種で、意外においしかったんですけどね。

岸田
ええ話やな。海外に行くと、僕はよくあるんですけど、日本で聞いていてもそんなにピンとこなかった音楽が向こうの景色なり空気なり生活に触れると、いままで気づかなかった魅力に気がつく。ロシアに行って印象的な音はありました?

反田
日本で聞いていたロシア作品とモスクワについて窓を見ながら、木枯らしの中、シンフォニーとか聞くと、違った雰囲気になるんですよね。まず、そこで感動して、数ヶ月してしゃべれるようになってきて、ラフマニノフの3番のコンチェルトをレッスンにもっていったら、先生が「違うよ、こう弾くんだ」って、弾いてくださったんですよ。それが、ロシア語にしか聞こえなかったのでびっくりして。なので、その思いがしたくて他の言語を知ったり、国にも行きたいなと思い始めて。

岸田
その後、どの国に行かれて、わっとなりました?

反田
イタリアが多かったですね。

岸田
イタリアには行ったことないんですよ。めっちゃ行きたいんですよ。

反田
人がまず好きなんですよ。陽気で人生どうにでもなれという性格が大好きで。モスクワでもイタリア人の友達とか仲よかったので、彼らの作るパスタも教えてもらいました。

岸田
料理好きなんですよね?

反田
僕、料理します。

岸田
今度、料理会しません?

反田
されるんですか?

岸田
たまにします。僕のはそんなにおいしくないけど。

反田
どんなもの作られるんですか?

岸田
パスタ好きです。

反田
じぁ、俺は、ジェノベーゼで。

岸田
僕は、オイルサーディンを使ったちょっと変わったのを最近作っているので。

反田
おれも家で練習します。


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現地の人のような錯覚に陥るのが好き


岸田さんは、かつて、ウィーンに滞在し、バンド「くるり」の作品として、ロックとオーケストラが融合したアルバム「ワルツを踊れ TanzWalzer」を完成させました。音楽の都、ウィーン。岸田さんも滞在中は、いろいろと刺激を受けたようです。

反田
岸田さんは日本と海外だとどう違いを感じました?

岸田
ウィーンに行っておもしろかったことは、いっぱいあるんですけど、ウィーンは、ドイツ語圏ですけど、方言も強くて、挨拶も違い、ベルリンに住む人と、歩く速度が2分の一くらい違くて。

反田
そうなんですか!

岸田
のんびりしていて。音楽で言うと、たまたま、旅行で行った時にアーノンクールのモーツァルトのシンフォニーをいい席で観られたんですけど、すごくよくて彼のファンになって、彼のやっている古楽のコンサートとか行きまくって、そこで彼が普段振っているようなバッハやベートベンや、弦の人たちがノンビブラートだったりテンポが早い古楽器を使っていたりというのにはまりましたね。あと、ゲルギエフが来て、ショスタコーヴィチ4番をやって。

反田
十八番ですね

岸田
4番はそれまで聞いたことがなかったので衝撃を受けて、クラッシックだけではなく電子音楽やレゲエもけっこう流行っていて、おもしろかったんですよね。ハンガリーだったりチェコとかクロアチアとかウィーンからいろんなところに電車で旅行に行ったりしましたね。
反田
いろんなところ行くのが好きなんですね。

岸田
そうですね。普段、動かないお地蔵さんみたいですから。

反田
小さい頃からですか?

岸田
そうですね。いろんなところ行くのは好きですね。行ってそこの人みたいな錯覚におちいるのが好きですね。

反田
わかります。僕は、墓地巡り好きで。

岸田
墓地好きですか?

反田
サンクトペテルブルクのお墓も見に行ったんですけど、チァイコフスキーだったり、リムスキー=コルサコフ、スクリャービンだったり、いろんな人のお墓を見てきました。

岸田
俺も行きました。ウイーンでもシューベルトとかフランスだとジム・モリソンとか。


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