生きづらさとは?

西田尚美さん(女優)×本谷有希子さん(劇作家、小説家)

2018

11.09

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本谷さん原作の映画「生きてるだけで、愛。」が、きっかけで出会ったおふたり。この作品は、他者とのつながりを求める現代の若者たちの心情をリアルに綴るラブストーリー。ヒロイン、寧子を演じるのは、若手女優・趣里さん。恋人役の津奈木は、菅田将暉さんが務めています。西田さんは、引きこもりがちな寧子が、社会への接点を求めアルバイトをはじめるカフェバーのマスターの奥さん役を演じています。物語の生みの親である本谷さんは、映画化された作品をみてどう感じたのでしょうか?


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普通を演じるのも難しい



本谷
私は、原作者なんですけど、映画にはほぼ関わっていないんですよ。関根監督と顔合わせをして、是非よろしくお願いしますと言って、その後、3、4回、台本の気になるところを言ったレベルです。今まで、いくつか映画化をしていただいて、自分の中での経験則みたいのができて、やりたいと言った人が思うようにやればいいというのが、映画化される時の心構えじゃないけど、思い入れが強い人が一人で舵取った方が絶対にいいと思っていて、私ももちろん自分の原作なので、思い入れもあるんですけど。まず関根さんがこれを原作に撮りたいと思った気持ちがあって、多分どう撮りたいかがある中に原作者が口を出すと、その思いの強さが薄まるだけだなと思って、どうなってもいいから思い入れが強いものが見たいんですね。自分が書いた感じと違ったとしても、それが誰かが熱く撮りたいと思ったんだったら、変な感じになっても面白いんじゃないかなと思って。でもそれで言うと寧子のバイト先のシーンは口出ししました。

西田
えー!そうなの?

本谷
みんなの性格設定が、漫画的に誇張されたいい人とか訳ありな人たち勢揃いみたいに書かれていたので。

西田
そうだったんだ!普通の人の重圧っていうか、それがすごく寧子には刺さるということにしたいんだなって思って、普通にしました。

本谷
普通になってた!

ふたり)
(笑)。

本谷
普通になっていたから、逆に役者さんは、やりがいがあったのかなと思ったぐらい。どうなんですか?

西田
普通に何かをやろうとすると意味深な感じになってしまったりするから、普通にやるのもなかなか難しい。

本谷
バランスとか色々考えてのことなんだろうけど、私だったら、多分もっと善意をすごく押し付けると思う。もういい人過ぎてっていうぐらい、いい人にさせちゃうかなぁ。

西田
そうだったんですね。それもやっておけばよかったですかね。

本谷
意外とそっちもおもしろいかもしれない。

西田
そうですよね。


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滑稽さは大切!


映画「生きてるだけで、愛。」の中では、引きこもりがちな主人公の寧子が、アルバイト先のカフェバーの寛容なマスターたちのおかげで、じょじょに心を開いていく姿が描かれています。しかし、とある些細なことがきっかけで、全てをぶち壊してしまいます。

西田
バイト終わりに、みんなでちょっと一杯やろうよという時に、寧子がいきなり壊れ始めるところがあって、トイレにこもったりして、ここに引っかかるんだ、この人って思って。

本谷
やっていけそうと思った直後ですもんね。歯車が彼女の中でずれ始めて、そのきっかけが、あれかって話ですよね。

西田
ちょっとびっくりした、

本谷
でも書いている時は、あれしかないと思って、あれで私とみんなは違うのではないかという疑い。寧子は昔から私と皆が違うのを誰かに見抜かれているのではないかという思いがずっとあって、それがバレないように私もみんなと同じみたいに振る舞っているんだけど、突発的にいろんなことをしてしまうから、結局何をやっても見抜かれちゃう、何をやっても無駄、何をやってもダメにしちゃう。バイト先ですごく居心地よく扱われ、みんなと一緒だよって言われて、初めて本当にやっているかもしれないと思って、それが崩れ出すきっかけは、なるべく彼女にしか分からないけど、彼女の中ではすごく切実な問題であればあるほどいいと思ったんですよね。いつも書く時にどっか一生懸命だけど引いてみた時にはすごく滑稽ということは意識していて、どこか滑稽というのがないと、嘘を書いてる気持ちになってしまうんですよね。

西田
あそこはやっていてすごく面白かったな。私は寧子みたいな感じではないけれど。

本谷
そうなんですか?全然ないですか?

西田
上手に生きれないところはあるけど、あそこまで極端ではないかな。

本谷
そうですね。寧子は、浮き沈みと感情の起伏が激しい。
西田
寧子は、しんどいだろうなって。やっぱり生きていて、みんなと合わせようとすると、そこから、外れたりすることがいけないんじゃないかとすごく強迫観念ではないけど、自分だけちょっと違うんだろうっていう風に責める時があって。だから見ていて、どういう思いで共感するのか?嫌悪を抱くのか?

本谷
嫌悪を抱いてもいい気がするんですよね。生きづらい状態の人を見て美しいっていう状態で終わってしまってもと思っていて、生きづらいと言っていること自体がもうちょっとした甘えだったりするから、そういう人を見て、そうだよねって思ってもいいし、いやでも私こういう人嫌いだなって思ってもいいし、むしろ両方あって欲しいと思っていて、美しかっただけに消化されたくないなと思う。生きづらいと思っている人はもっと混沌としてから。その嫌な部分とか醜い部分とかあるから、映像は美しいけど、なるべく生きづらい女性は大変だねっていうところで終わって欲しくはない。

西田
なるほど。


映画『生きてるだけで、愛。』は、11月9日より新宿ピカデリー他全国で公開になります。

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