大自然の中での暮らし

佐藤藍子(女優)×眞野ナオミ(起業家)

2019

11.29

null

「馬」の存在



佐藤
わたしにとって、馬は、家族になってしまって、主人の仕事もインストラクターなので、ふたりの人生の中にも馬は当たり前のようにいて、乗馬クラブの方針も馬ファーストなんですけど、私と主人の人生も馬ファースト。動物ファーストで、うちに犬も猫いっぱいいるじゃないですか、この子たちがどうやったら幸せに生きていけるのかみたいな話をすることがほぼほぼで、余裕ができたらこういう風に厩舎を作ってみたいとかそればっかりなんです。動物は人間にどうしても管理されるので、その子たちの気持ちとか意思を持ってたとしても、それが通じないかなって思うと、心を閉ざしちゃうことがあって、わがままを言ってくれるのはその子が安心できる環境。人間もそうでしょうけど、心に溜めないで素直にあれしたいこれしたいと言ってくれるのは管理している側としては嬉しい事。馬ってよくどういう生き物って言われて、私は「大きな犬ですよ」って言うんですけど、基本は草食動物で、大きいけど心が優しくて臆病で、視界が350°なんですよ。しっぽのところだけ本当の真後ろだけが見えないから、後ろから近づかないで下さいって言われるのは、そういうことなんです。唯一、本人たちにとって見えないところ、怖いところ、だからそこからわっと来ると、びっくりして唯一の自分が逃げれるパワーの足を使って蹴っちゃうこともある。なので、馬と接する時は声をかけたり、真っ正面、見えるところからするといいですね。馬はすごく優しいし、記憶力がいいんですよ。だから最初は私も習い始めた時に、裏掘りと言って馬の足の裏をお掃除するんですね。その時に足をあげてくれなくて、インストラクターさんがやるとあげるんで、先生がいなくなるとあげないんですよ。なんでだろうと思って先生に言ったら「洗礼を受けましたね」って言われたんです。馬にとって知らない人や初めて会う人に自分の体を触ってもらうっていうのは、人間も怖いじゃないですか、そこから毎回通う度に名前を呼んであげてコミュニケーションをとっていたら、ある日、裏掘りの道具を持っていったら、何も言わないでもあげてくれたんですよ。

眞野
ちょっと感動です。

佐藤
もう嬉しくて、そこから一気にお互いの距離が縮まりました。向こうがやっぱり開いてくれないと無理やりは駄目だなと思ってたんで。だから人間と同じで、感情はありますし、今機嫌がちょっと悪いとか、ご飯時だからちょっとイライラしてるよとか、ちょっと運動して疲れてるよ、眠いよっていうのを体全体で結構表してくれたりするんですよね。だから人間も素直になれるのかなっていうのは接してみてわかったことですね。何か自分の心を映す鏡みたいな感じ、乗馬する時、今日うまくいかないんだろうってちょっと思った時は、馬のせいではなくて自分の心が乱れてたり、馬に合わせてあげられなかった自分を反省して、最初の頃は乗馬日記に書いてました。

眞野
すごい!日記をつけてたんですね。

佐藤
つけてました。今日は馬の動きを感じ取れなかったとか、そういうのを今でも読み直すと初心に帰れたりして。

眞野
子供たちにアドバイスしてみようかな。


null

本来あるべき感覚


佐藤さんが暮らす乗馬クラブがあるのは、千葉県。ブログでも、「綺麗な朝焼け」や、「朝の放牧の風景」など、ご自身の日常が綴られていますが、そこは、都会の生活とはかけ離れた大自然が溢れる場所です。

眞野
あの環境がすばらしくて、あそこに住んでいるのが羨ましいなと思います。

佐藤
日本でいうと借景ですね。景色をかりて広く感じられるように、たまたまなったと言いますか、あんまり周りに家もなく、あれをずっと維持できるように頑張ってやってますけれども。私は神奈川県の川崎市の住宅街で生まれ育って、虫が一匹いただけでも「やだっ!」と言ってた子供だったんですよ。犬は飼っていたんですけど、本当に虫にもちょっと神経質だったので、そこからも東京都心に住んで、ひょんなことから乗馬を始めた時に、今のところですよね、馬がやっぱり素晴らしくて、乗馬が素晴らしくて、それに会いに行ってたら、その虫がいる状況は当たり前になったというか、馬がいるんだから動物もいるし、気にならなくなってきて、そこにお嫁に行ったじゃないですか、こういうところで暮らすって言った時に一番びっくりしたのが親でしたね。あの藍子が「なんで、あそこで暮らせるの、大丈夫なの?」と最初に言われました。

眞野
けっこう大きい虫がいますもんね。

佐藤
この間、大きな台風あった時に雨戸を閉めたらボトっと、その後、またボトっと落ちてきて、何かと思ったらアシナガバチの巣が落ちてきて、そしたら漫画のようにもう巣からぶーんと大きな蜂が5、6匹出てきちゃって。その時、ダッシュして、主人にいったら「とりあえず放っておきなさい」と言われて、 雨に濡れたら巣がダメになるから、事なきを得たんですけど、そういうことも自分で自分をこんなに逞しくなったんだろうとか思ったんです。一番大事なものがしっかりしてれば、その後のことは副産物なのかなと思えるようになっちゃって、今の自然の中というのも大変なことももちろんあるんですけど、台風で倒木したり、停電もしますし、でも、それ以上のものを何かもらえるから、逞しくなったのかなっていう気はするんです。自然の中で暮らしてると、もうちょっと皆さんが自然の中で人間らしい本来あるべき感覚を取り戻せるようになるといいなと思いながら、こういうところで暮らしてますっていうことを写真でアップしたり、馬はホースセラピーといって心も癒してもらえるので、技術だけを追求するのではなくて、現代人こそただ本当に乗って歩くだけでもいいんですけど、それをするだけでもとても回復すると言うかリフレッシュできるんじゃないかな。


null

これまでの記事

その他の記事