住んだからわかるフランスの魅力

上野万梨子(料理研究家)×はな(モデル)

2021

01.22

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パリ5区の思い出



はな
私が最初にフランスを訪れたきっかけがいきなり留学でした。15歳の時、夏休みを利用して、トゥールという町に語学留学したんですね。大学の寮にずっと1ヶ月間滞在して、日中は夏期講習を受けて、フランス語の勉強をしていました。

上野
トゥールは、Jardin de France:フランスの庭と言われるロワール地方ね。

はな
お城がたくさんありますし、綺麗なフランス語を話すと言われているところで週末はパリを訪れたりしたのですが、パリは誘惑があるじゃないですか!

上野
そういう意味では、パリではなくてパリに近いけどパリではない地方の都市で語学を勉強するのはいいですよね。

はな
そうですね。私は英語も話せるので、パリに行くと絶対に英語を話してしまうと思ったし、美術館も映画館も本当に色々やりたいことが詰まっている街なので、なるべくそこから離れた場所で勉強したいと思ったのがきっかけでトゥールを選んだんですけど。

上野
それは素晴らしいですよね。

はな
初めてパリのアパルトマンを借りたのが大学を卒業してからで、どうしてもパリに留学したかったので、4ヶ月間お休みをもらって、パリの5区にアパルトマンを借りて、語学勉強という理由をつけて滞在しました。

上野
5区というと?

はな
Maubert – Mutualitéという駅。本当にすごくいい場所で、ノートルダムも近いし、マレ地区にも歩いていけるし、ちょっと足を伸ばせばサンジェルマンにも行けるし、学生街だったのですごく安全で、映画館もたくさんあるので、よく映画を見に行きましたね。

上野
私は留学時代に一人でパリに行ったんですけど、その時に一番最初にアパートを見つけるまでの間にMaubert – Mutualitéのエコール通り。

はな
まさにそこです!

上野
エコール通りの古びたホテルに滞在しました。そのエコール通りを降りて、Maubert – Mutualitéのカフェに座って、パリで初めてのカフェオレとクロワッサンを食べたの。今でもそのカフェはもちろんありますけど。

はな
私も4年前に自分が住んでいたエリアに行きました。駅のそばにコインランドリーがあって、週末はお洗濯するのにそのコインランドリーに行って、洗濯物が終わるまでカフェで時間をつぶしていましたね。

上野
セール川まで歩いて行くとすぐだし、駅の所にマルシェがあったでしょ?

はな
そう、そのマルシェにいつも行っていました。やっぱりパリにはマルシェがあって、マルシェがあるとお料理をしたくなる、そのサイクルがちゃんとありますよね。


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祝福する文化



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はな
フランス、特にパリは、いい意味で最初からディスタンスがあると言うか、それはファッションにも通じて、みんなそれぞれ違う格好をしていても、いいじゃんみたいなすごくクールなスタンスがあると思うんですが、上野さんは30年間、パリに住んでいてそういった見方はされますか?

上野
フランス人と言うと個人主義とか、あんまり英語も喋らないと思い込んでいる方が多いんですけれども、そうじゃないですよね。まず英語に関しては、喋りたくてしょうがない。あとは、つかず離れずと言うか、何かがあった時の助け舟を出す早さは、やっぱりすごいなと、本当に教育ですよね。

はな
私もパリで一人暮らしをしていた時に、たまたま借りたお部屋の大家さんに息子さんがいらして、同い年位だったのですけど、本当に親切で私が一人の時、自分の友達と一緒にカフェに連れて行ってくれたり、映画でよく見るオートバイ2人乗りをして。

上野
乗ったの?

はな
乗ったんです!

上野
いいわね(笑)。憧れるわ。

はな
凄く親切な方だったんで、こっちも心を開けば向こうもすごくいろいろと話しかけてくれるし、連れて行ってくれるし、自分の知り合いにも紹介してくれるし、すごくそういったやり取りがまた楽しめましたね。パリに行く度に思うのが、頑張っている人に優しい街。そういうところがすごく好きな部分であって、初めて訪れた時も若い子に対してもすごく親切だったり、頑張れみたいな気持ちで接してくださったり。

上野
やはり、彼らは基本的にちょっとしたことでも祝福する気持ちをすごく持っていると思う。本当にささやかなことでも「良かったね」と言う。辛いことがあって同情するのはもう一つの美徳かもしれないけれど、でも、とにかく喜んで、ちょっとでも祝福してくれるのは素晴らしいと思うし、祝福する人たちなんだな思いますね。

はな
4年前に、ちょうど7月14日の革命記念日にパリにいて、それを知らずに空を見上げたら空軍がトリコロールの煙を出して飛んでいて、すごい綺麗。街に出てみたら戦車が走っていたり、馬に乗った兵隊さんが歩いてパレードをしていて、それをまた街中の人たちが祝福して、ありがとうっていう感謝の気持ちを示しているんですよね。それを見てちょっと泣きそうになりましたね。

上野
やっぱり国がひとつの家族ということね。今回のコロナでも、やはり国が一つの大きな家族ということをすごく感じたし、同じ家族でも性格が違う子供もたくさんいるように、やっぱり国としても、いろんな矛盾や辛いことをたくさん抱えていると思うけれど、やっぱりちょっと羨ましいなと思う。


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