コロナがものづくりに与えた影響

安藤桃子(映画監督)×松本恵奈(ファッションブランド『CLANE』クリエイティブディレクター)

2021

03.19

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やれることは、全てチャレンジ



コロナの影響で、過去に例がないほどの落ち込みをみせたアパレル業界。その中で、松本さんは、どう窮地を乗り越えてきたのでしょうか。

安藤
私は高知にいて、コロナは47都道府県、世界各国、人類皆が同じことを同時に体験しているけど、それぞれの地域ごと、もっと言ったら、高知だったら、山間部と海沿いとそのコミュニティごとに捉え方、感じ方が違っている。東京でお洋服に携わる側として、今の時代をどう感じて過ごしているのかな?

松本
最初に比べると、今はもうそこまで落ち込まなくなったんですかけど、東京もみんな辛いし、大変で苦しい時期を一緒に生きている感じがする。コロナが本当に拡がり出した時に、もう会社が潰れるんじゃないかなと思って、すごい体調悪くなったりとか、神頼みに行ったりとかしていた時期も正直あったんです。でもどうやって前に進んでいくかを考えて、コロナが嫌だと言うより、コロナだからこそ変われること、ピンチをチャンスに変える方法を考えていたのは多分一生忘れないですね。

安藤
これをチャンスに変えるんだと奮起したきっかけはあった?

松本
どうしようと悩んだけど、やっぱり社員のお給料を払わないといけないし、生き残りたい気持ちとか、もうこんなところで終わらせたくない気持ちもすごいあったから、とにかく今は自分たちができることは全部しようと思って、いろいろトライしていた気がします。

安藤
ファッション業界も販売の仕方も変わってきているよね? オンラインが多い?

松本
「CLANE」は逆にすごい売り上げが伸びて、コロナになってから前年の300%ぐらい上がっているんです。今までももちろん頑張っていたけど、できることをとにかく全部やろうと一致団結した瞬間から、本当に売り上げがすごい上がりだしたから、逆に会社がひとつになるいいきっかけでもあったし、人はまだまだ出来る事があるんだと気づかせてもらった。もちろんコロナはなくなってほしいし、嫌なことではあるけれど、出来る事を探していきたいと思いますね。


その場で体験することの価値



昨年、緊急事態宣言が出された時は、すべての直営店の休業を余儀なくされた「CLANE」。そこでSNSやYouTubeでの発信に力をいれるなど、様々な取り組みを行うことで、これまで以上の力を発揮することができたという松本さん。同じく、一時は、クローズしていた映画館。今では、動画配信サービスも増え、家で、映画を鑑賞する機会も増えましたが、高知の新しい文化発信基地として、映画館を企画、運営する安藤さんは、映画館や劇場の存在意義をどう感じているのでしょうか。

安藤
究極と言えるくらい、自分の今までやってきたこととその本質に向き合う時間が与えられたよね。なんで私はこれをやってきたんだろうってことを突きつけられた。でもそれは、自分でやってきたことだから、そこから進化したい気持ちで、もう一回、個人も世界も転換していくんだなと感じる。

松本
時代が変わりましたよね。

安藤
究極の時代だよね。

松本
そういう時代に生きられたことは、逆にプラスの経験として、ある意味もしかしたら、良かったのかもしれないくらいで考えられるようになりたいとすごい思っている。

安藤
私も高知から東京に行かなくなって、全部リモートになって、みんなともなかなか会えなかったりするけど、新しい問題があっても絶対に解決法はあるし、その答えは、今は未知数で見えない気がしているけど、答えは絶対にある。そもそも演劇をみんなで観る意味ってなんだろう、映画もなんで映画館なの? 映画や映画館の意義ってなんだろう? と考えた。オンラインでめちゃくちゃ面白い取り組みや挑戦が始まって、だからこそリアルな場で一緒に体験する事の意味は、ちょっと聖地みたいな感覚があるんだと改めて思えた。日本全国、近所の神社に行っても天照大御神様がお祀りされているけど、でもやっぱりいつかお伊勢参りに行きたいのが日本人心。昔から一生に一度は山を越え谷を越えてお伊勢参りに行きたいというのがある。映画もコンテンツとしては家でも観られるし、携帯でも移動しながらでも観られる。だけど、聖地のように本質の体験を求めて劇場に行きたくなる。例えば、パリのオペラ座でいつか観るんだという価値観はもっと強くなっていくし、それは絶対になくならないと思う。



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