自分のコンプレックスも個性にしてメイクを楽しむ

Ryuji(ヘア&メイクアップアーティスト)×下村一喜(写真家)

2022

04.08

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メイクも多様性の時代



下村
Ryujiさんが出版された『嫌いなパーツが武器になる 1万人の顔を変えたプロのメイク術』の中でも色々な可能性のメイクにトライしてみよう、最悪、落とせばいいと書いてあります。一番良くないことは同じメイクをし続けること。数々の女優さんを何度も撮っていらっしゃると思うんですけど、同じ顔だったことはないですよね。

Ryuji
ないです。絶対にないです。人間は不思議で毎日会ってる人でも、2回と同じ顔は、ほぼほぼないんですよね。だから結局同じメイクをしてること自体がナンセンスで、前の日に食べたもの、水分を取ったとか、どれだけ寝たとかコンディションを含めて、その時にあったエッセンスは絶対あると思うから、同じにしようと思うこと自体が、不思議な感じですよね。

下村
まさしくそう思います。そもそも同じ事は世の中でも、雲の形にしても地層にしてもないですよね。

Ryuji
同じようにしようと思っていくうちに、どんどんパーソナルの素敵な部分が覆い隠されていく、カバーされていくのがメイクにとって一番よくないと言うか、違いを見せていくことこそ、素敵に見えてくると思います。そこを楽しむ習性や思考になってしまえば、今日ちょっと目が腫れているからちょっとアイラインの引き方を変えてみようかなとか、そのちょっとのさじ加減が楽しめるようになってくるとメイクも面白くなってくるし自信も出ると思います。

下村
チャーミングや隙、個性が宿るんですかね。

Ryuji
黙ってるとすごい美人でシンメトリーな顔をした方が、例えば、笑った瞬間に右目だけ細くなるのはドキドキしますからね。そういうところが個性というかキラキラ輝いてると言うか、僕はそういう人に惹かれますね。100万人いたら、100万人と同じ顔は一人もいないので、もともと個性の塊なのに、それを修正して、なぜ同じ顔にするのか、そんなもったいないことをする必要がないとつくづく思いますね。客観的に見てですけどね。もちろんそれがコンプレックスを解消するとか、安心感や流行ってると言われていることが気持ちを高揚させることも当然あると思うんですけど、何か覆い隠す文化は、そんな時代ではないじゃないですか、多様性の時代だし。

下村
今まさにダイバーシティと言う考え方が出てきてますものね。

Ryuji
失敗したら消せばいいだけなんで、楽に考えて個性的にメイクをしてみるのも面白いんじゃないかなと思うし、もしかしそういうの好きと言ってくれるお友達が実はすごく仲良くなれる人だったりするかもしれないし、いろんな可能性が広がる。


自分のスタイルを持つ



メイクひとつとっても楽しんでできるようになると、自分に自信がついてそれは、やがて、生き方にも繋がっていく、とお二人はいいます。

Ryuji
僕、そもそもメイクはパーソナルなものだけど、コミュニケーションツールだと思いますよね。

下村
まさしくそう思います。

Ryuji
いつもと違うリップを塗るだけで「今日いつもと違って可愛いね、素敵だね」と友達に言われたり、「眉毛の形変えたの?」とか、それで会話が生まれるわけじゃないですか、そこにチャレンジがないと何も進まないと言うか、朝ちょっとやればいいし、こんな簡単なコミュニケーションツールを利用しない手があるのかなと思うんですよね。

下村
ご夫婦でも、普段生活していて、ご飯に行こうかとなった時に、奥様がすごく素敵な赤い口紅を塗っていたら、逆にまた惚れ直しちゃうとかね。小さい時にお母さんがメイクをしてる姿を見ると、急にちょっとどこかに行っちゃうんじゃないか、儀式のようなちょっと神秘性な思いはありました。

Ryuji
メイクが上手くいかない、下手だと感じ、辛くなる人がいるじゃないですか、僕は声を大にして言いたいんですけど、日本人は世界で一番メイクが上手だと思います。

下村
私もそう思います。ただRyuji先生がおっしゃっていたように点でメイクしているなと思います。ミクロでメイクをしている。Ryujiさんが書いてらっしゃった、

Ryuji
木を見て森を見ないというやつですね。

下村
そうです。器用なんだけど、ディテールだけで終わってしまう方もいるのかなと思います。

Ryuji
みんな基本、すごい近い距離でメイクしてますからね。その距離で誰にアイラインを見せるんだろうと思いますし、もうちょっと離れて人と話すので、離れてメイクを確認した方が素敵に見えるんじゃないのかな。みんな手先が器用なだけに、ディテールに行きやすい、僕自身もそうなんですけど。

下村
でも、例えば、Ryujiさんといつもご一緒させて頂いてる浜崎あゆみさんの撮影で、ミュージックビデオやジャケット写真もご一緒させていただいてるんですけれども大きなプロジェクトになると、どういう色使いにするのかRyujiさんが書いて見せてくださるんですね。それはいつもワクワクしています。

Ryuji
ドキドキで書いてます。

下村
もちろん大スターだからもう綺麗だし、何でも似合いますよね。

Ryuji
本当ですよね。オーラがあると言うか、似合わせる。自分を持っていらっしゃる方は、例えばどんなメイクをしようがどんな写真にしようが、その人になる。僕、スタイルというワードが大好きで、連呼するんですけど、スタイルを思ってるからこそなんでもできる。お化粧だけではなく、生き方として自分はこうなんだと原点に戻るところがあると、意外となんでもできるじゃないですか。恥ずかしいもないし、怖がらないでいるし。

下村
戻ってくる空港があるということですよね。

Ryuji
そうなんですよね。スタイルをもつことを目標に僕は生きているんですけど、そうすると自分に自信も持てるし、世の中が自分と違った時でも慌てないでいいと言うか、浜崎さんは、そういう女性ですよね。スタイルを持っていらっしゃるのがすごく素敵だし、そこがチャーミング。一緒にいてすごく嬉しくなるような人。

下村
優しいんですよね、座長気質で。

Ryuji
親分ですね。怒られるかな(笑)


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