アートに触れることで育まれるパワー

浅野忠信(俳優、ミュージシャン)×伊賀大介(スタイリスト)

2023

05.05

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子ども扱いしない子育て



浅野さんは、写真家の若木信吾さんが立ち上げた絵本レーベル「若芽舎」より、児童向けの本「845」を発表されました。この本は、文字や色がなく、筆線画によるストーリーで構成されています。

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伊賀
読みました。

浅野
前から絵本は個人的には作っていたから、絵だけで表現したくて、内容は、浮かばないから。ひたすら描いて、後で辻褄を合わせる。ただ登っている人を描いたけど、あくまで読む人の空想の世界で決めてくれればいいというのがあって。

伊賀
一応、便宜上、始まりはあるけど、どこから読んでもいい感じはする。

浅野
最初にお父さん、お母さんがあたかも文字が書いてあるかのように読み聞かせてほしいな。

伊賀
それいいですよね。娘も読んで面白がっていました。

浅野
本当はホワイトボードみたいなページになっていれば、消して書いてができるんだけど。子どもたちが小さい時に、ドラマをすごい必死に見ていて、彼らなりに感じているわけ。だから、子どもに近づけるのではなくて、自分に近づけることをやるとより直接的なやり取りができる場合があるから、そういう意味でもやっぱり、字は、いやだな。

伊賀
本当そうですよね、子ども向けは目線下げるみたいなことじゃなくて。

浅野
全然違う。赤ちゃんがお腹にいる時からいろんなことを教えていい。生まれてすぐに箸の持ち方、トイレの行き方、漢字の書き方など何でも全部教えて、みんな「まだ赤ちゃんだからわかんないよ」と言うけど、わかんないわけがない。むしろ君よりわかっている。ただそれに対して答えられない。まだ言葉も発せられないし首もすわってないし、それを友達に説明したら、はじめからトイレの行き方を教えて「2歳になったら君はオムツを取るんだ」と言ったら、実際にその子は、2歳から普通に自分でトイレができた。教えていたから。これはすごい重要。


子どもがアートに触れる大切さ



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浅野
子どもは何歳?

伊賀
今、上が10歳で、下が6歳です。こないだ岡本太郎を見せたら、すごく喜んでいました。以前、岡本太郎さんが審査員を務めた子どもの絵のコンクールみたいのがあって、岡本さんがバーって来て「全員1位。終わり。そんな順番なんかないよ。」みたいなこと言っていました。

浅野
俺、前にワークショップをやらしてもらったことがあって、子どもを集めて、小さいノートにできるだけいっぱい絵を描いて、自分だけの絵本を作ったけど、結構いろんな子がいて、すごく丁寧に動物を描く子がいる中で、ぐちゃぐちゃに真っ赤に塗っている子がいたの。この子やる気ないと思ったけど、やっぱり一応、先生という立場だから「これ何を描いているの?」と聞いたら、「秋」って言われたの。えー、俺が間違えていた。すごい適当にやっていると勘違いして、ちょっと変な目で見ていたけど、もう真っ赤な秋にしか見えない。すごいと思って。

伊賀
そういうのはありますよね。もうちょっと色を使った方がいいとか、バランスとか見てしまうじゃないですか。

浅野
何を描いているのと思った時点で、もう違う。子どもは面白いね。思い出したけど、大竹伸朗さんが展示をした時に美術館でさりげなくお客さんを見ていたら、3歳ぐらいの子どもとお母さんがいて、大竹さんの絵を見て子供がウーってなっていきなり走り出して絵にタックルしたんだって。お母さんは、「なにをやっているの。ごめんなさい」となったんだけど大竹さんは、それ最高!正しいと思って、子どもがピュアにタックルして、すごいよね。何を感じたのかわかんないけど、小さい頃にいろんなアートを見るべきですよね。

伊賀
行くと楽しいじゃないですか。

浅野
確かに子どもの頃に父親にエッシャーの不思議な絵みたいな子どもが見てもおもしろそうな展示に連れて行ってもらった。絵もそうだけどその1日のことをすごく覚えている。普段行かない場所に行って、何かを見せられているのが面白い。

伊賀
それで洋食屋でハヤシライスを食べたみたいな。

浅野
そう、初めて餃子を食べて、お酢につけるのが美味しいと思って、そういうのを覚えているのはいいね。


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