一枚の絵が誕生するまで

山崎静代(南海キャンディーズ)×木原千春(画家)

2023

07.14

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しずちゃんが、木原さんの個展をふらっと訪れたことで仲良くなったお二人ですが、そもそも木原さんはどのようなきっかけで画家を目指そうと思ったのでしょうか。

描くことで得られるエネルギー



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山崎
千春ちゃんも独学だよね。

木原
独学。

山崎
いつから描き出したとか改めて聞いたことはなかったけど。

木原
絵は子どもの頃から好きで、祖父母宅に美術の本があって、日本の画家さんが載っていたのね。それを見て、小4とか5ぐらいのときに、画家という仕事があるんだと知って、画家になりたいなと思った。中学1年生の美術の教科書にダヴィンチの「モナリザ」とフランシス・ベーコンの「頭部」という絵が載って、それ見たときにすごい衝撃を受けて、画家になろうと決めた。こっちへおいでよみたいに言われたような気がして、勝手にね、妄想かもしれないけど。

山崎
そこから1回もぶれずに。

木原
ぶれず。なんでこんなに好きで、はまったのか、それは、唯一自己表現ができるのが、絵だったのかもしれないね。

山崎
早いときに見つけたんやね。

木原
それはありがたいなと思いますけどね。しずちゃんは逆に、絵を描くきっかけは何だったの?

山崎
物心ついたときから、落書き程度にみんなお姫様の絵とかよく描くやんか、ああいうのは描いたりして、その後、少年漫画を描いて、絵を描くことは、好きではあった。元々の感覚で描くのが好きというのと、あと、高校2年の時に片思いした人が絵がうまくて、その人の絵を観て、その人の絵に似てる漫画を見つけたらその漫画を模写するとか、「AKIRA」という漫画なんやけど、勝手に好きな人に染まりたくなるのよ。そういうのもあるかな。でも本職ではないし、ずっと描き続けて、苦しいところとは、全然向き合ってない、描くことで苦しむとかをしてないし、自分の描きたいときに描いていて、ずっと締め切りがあるから、これまでに頑張ってやろうみたいのあるけど、それだけを仕事にしたら、苦しいとかあるでしょう。だから、そういうところは、すごいなと思うんやけど。

木原
それしかないからというのもあるのかもしれないけど、描いていると、良いエネルギーというか、いい状態に入ったりするから、プラマイゼロ、むしろプラスになるぐらい。だから続けていられるし、何よりも面白い。


描くプロセス



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山崎
よくインタビューを受けて、どういうときに描こうと思うんですか?とか、降ってくるんですか?とか、よく聞かれるんけど、大体答えるのは、降ってくるとこは全然なくて、生き物を描くのが好きやから、例えば、カエルを描こうと決めて、そこから色の付け方で変えていったりとかしてくんやけど、そういう生き物を見たときとか、広大な景色を見たときとか、これすごいと思ったら何か描きたいなと感じたり、あと、人の絵を見たとき、美術館とか行って、衝撃を受けたときに、自分も何かやりたい、やれるんじゃないかみたいな衝動がちょっと出る。あとはもう締め切りに向けて、あかんかなあかんという状況に追い込んでもらって描くのは結構多くて。千春ちゃんはどう?

木原
大体一緒かもしれないけど、降ってくるのは、ないけど、ただ降ってくるという言い方ではなくて、自分が今取り組んでいるものと、何か違うものを見たときに、リンクするというか、アンテナを立てているから、何かキャッチするのね。それでこの表現、このモチーフで行きたい、描きたいというのが繋がって広がっていく感じ。

山崎
常に自分の中でアンテナを張っていてそれに何かが引っかかる?

木原
意識してないアンテナで、別に、何かを探しているわけではなく、パーンって何か入ってくるとか繋がるときがあって。

山崎
降ってくる?天才の方や!

木原
そんなんじゃないけど、でも必ず理由があると思うから。こういう言い方しかできないけど、多分理由があって、全部、繋がっている気がする。

山崎
千春ちゃんは同じモチーフを何回も描くよね、それがすごいなと思って。私、そういうのができないというか、やろうとしていないのか、モネも同じ、景色をずっと描いたりして、何かそれで見えてくるものがきっとあるんだろうけど私は1個描いて終わり。

木原
例えば、しずちゃんが鹿の絵を描きました。その鹿のポーズとか、塗り方が、すごい面白いのができたなと自分で思いました。これをまた描いてみたいとかは思わない?

山崎
あんまり思わないかな。

木原
もうどんどんどんどん次の新しいモチーフに?

山崎
そうやね。

木原
それもすごい想像力な気がするけど。

山崎
いや、でも1個の鹿でもいろんな角度でいろんなポーズしているのを何枚も描く人にいいなと憧れを持っているんやけど。

木原
今度やってみたら?繰り返し同じモチーフを描くのは、コピーしているわけではなくて、同じモチーフを描くことによって、同じ風に描かないから、固定概念をいろいろ超えていけるというか、表現はどんどん崩していける可能性がいっぱいあるから、繰り返し描くし、ブラッシュアップにもなるけど、ブラッシュアップ1で表現を広げていく可能性をどんどん開拓していくのが9ぐらいだから多分連続して描けるし、そうやっていたら、また違う次の段階が出てきて、そこと繋がっての繰り返しかな。あと過去、描いてきたものあるじゃない。もう多分20年以上やってきたけどそういったものも今、助けてくれたり、全部が繋がって回っている感じがする。ずっと描いてきたから、多分そういうのが今できているんだろうけどね。


【しずちゃんの、創造と破壊 展】
8月2日から14日まで伊勢丹 浦和店でも開催されます。
ぜひ訪れてその世界観を目撃してください。

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