2021/10/31

「コケがないと屋久島の森はない」達人・藤井久子が語る“コケの魅力”とは?

DDP編集部

10月31日(日)の放送では、コケめぐりの達人・藤井久子さんをゲストに迎え、コケの魅力について、たっぷりと語っていただきました。

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(左から)藤井久子さん、ホラン千秋

コケにハマったきっかけ

藤井さんがコケの魅力に惹かれたのは、母と一緒に屋久島へ旅行に行ったときのこと。縄文杉を観光しようと依頼したガイドが、たまたまコケに詳しい人で、「屋久島を知りたいのなら、縄文杉よりもまず“コケ”を知るべき」と教えられたことがきっかけでした。

そのガイドがコケを拡大して見るためのルーペを貸してくれたそうで、「今まではコケを余裕で踏みつけていたけど、よく見てみると“こんなに精巧につくられていて美しいんだ”って(笑)。種類もたくさんあって、どれだけ見ても飽きない。小さな森に迷い込んだようにいろんなコケが潜んでいて、見方がパッと変わった」と振り返ります。

屋久島といえば、縄文杉や屋久杉の森などが有名ですが、「その近くの足元を見ると、いかにコケが多いことか。もともと屋久島は岩状の島で、植物はまったく生息していなかったんです。それなのに、あんなに巨大な杉が生えて今も植生が豊かなのは、最初に岩にコケが生えてふかふかのマットになり、それが苗床になったから。つまり、コケがないと屋久島の森はないんです。植物が豊かになると動物も豊かになる。コケは“すべての生き物の土台”みたいな役割だと教わったんです」とガイドの言葉の深意を代弁します。

実は身近にある“コケを見つける秘訣”

藤井さんいわく、コケは「ものすごく頑固でこだわり派。植物のなかでも妥協知らず」だそう。というのも、「コケのなかにも“岩を好むコケ”“木の幹を好むコケ”“土を好むコケ”“日当たりを好むコケ”など(種類によって特性が)さまざまで、自分の好きな場所がハッキリと決まっている」と言います。

藤井さんによると、日本に生息しているコケの種類はおよそ1,900種類。世界では約2万種類もあるそうで、「日本は国土としては小さいけど、世界の10%ぐらいのコケが見られる。また、日本には四季があり、島国で周りが海なので湿気も多いし、起伏に富んでいる。さらに、北から南まで縦に長いため、北で見られるコケと南で見られるコケの種類も違うので、いろいろなコケが見られる。世界のコケ好きにとっては、日本はとてもいい国」と話します。

ここでホランが“いいコケを見つける秘訣”を尋ねると、藤井さんは「コケの気持ちを想像すること(笑)」と言います。「コケはきっと自分が生えやすい場所に根を下ろすと思うので、“どんなところだったら自分が生えていたいか”みたいに“コケの気持ち”になりながら街なかを歩いています」とレクチャー。

それを聞いたホランが、「コケの気持ちになってみて、“私だったら、この湿った板に生えてみたいな”“(人に)踏みつけられない、ちょっと高いところにある岩に生えてみたいな”とか?」と想像を膨らませると、藤井さんからは「そうそう! 私が言いたいことをすべて言ってくれた(笑)」と褒めちぎるひと幕も。

さらに、「植物なので光と水は必要。それとプラスアルファで“人に踏まれたくないな”“日影が程よくあったらいいな”“そよ風のあたる場所がいいな”っていうところを考えながら探してみるとコケがいたりします。そして、それが“自分と発想が似ているコケかも”と思うと、また楽しい」と熱弁すると、ホランは「ただ単にきれいな緑のコケだけじゃなくて、なぜそこに生えているのか、どうやって増えていくのかということまで見ていると、なんだか小宇宙みたいですね」と感じ入った様子でした。


鹿児島県

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