2022/03/20

200パターン以上の会話をする「鳥」!? 奥深き「シジュウカラ」の世界とは? 専門家が解説

DDP編集部

3月20日(日)の放送では、京都大学 白眉センター特定助教の鈴木俊貴(すずき・としたか)さんをゲストに迎え、奥深き鳥「シジュウカラ」の言葉の世界について語っていただきました。

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鈴木俊貴さん、ホラン千秋

シジュウカラは会話をしている?

京都大学でシジュウカラの言語を研究している鈴木さん。「鳥は、さえずり以外にも、“会話”のために鳴き声をしょっちゅう鳴き交わしている、ということが研究から分かってきました」と言います。

そもそも鈴木さんが“鳥が言葉を交わしているのではないか”と感じたのは大学3年生のとき。卒業研究のテーマを探すため、全国各地を巡ってさまざまな動物を見て回るなかで、「シジュウカラだけが、いろいろな鳴き声をしていることに興味が湧いた」ときっかけを語ります。

鈴木さんによると、シジュウカラは北海道から沖縄まで、都会から標高1,000メートルを超える山の上まで広く生息しており、「人間の生活域よりもシジュウカラの生息域・分布域のほうが広い」と話します。

そんなシジュウカラを冬場に観察していたとき、鈴木さんにとって印象深い出来事が。それは、ひまわりの種をまいた餌場にシジュウカラが4〜5羽やって来て餌を食べていたときのこと。そのなかの1羽が突然「ヒヒヒッ」と鳴き声を上げた瞬間に、みんな飛び立って藪のほうへと逃げていったそう。

鈴木さんは“何が起きたんだろう?”と不思議に思っていると、シジュウカラがいなくなった0.5秒後ぐらいにハイタカが餌場を襲いに来たのを目の当たりにし、「ハイタカが(近くに)来ていることを仲間に教えたんじゃないかと思った」と振り返ります。

また、シジュウカラは秋から冬にかけては4〜5羽、多いときには20羽以上で群れを成して生活をするそうですが、ときどきはぐれてしまうときがあり、仲間を呼び寄せるときに「ジジジ……」と鳴くそう。

さらに、それは仲間とはぐれたときだけではなく、いい餌場を見つけたときや、おいしそうな木の実があるのを見つけたときなどにも同様に「ジジジ……」と鳴くのだそう。それを聴いた鈴木さんは、「デタラメに意味もなく鳴いているのではなくて、ひょっとしたら『タカが来た』とか『集まれ』みたいな言葉があって、それらを巧みに使って会話しているんじゃないか、と思うようになった」と推測します。

シジュウカラの鳴き声を聴き比べ!

そして今回は、実際にシジュウカラの鳴き声を聴き比べてみることに。

まず聴いたのは、オーソドックスな鳴き声から。ホランが「朝のあいさつ」と予想するも、鈴木さんいわく、正解は「春に繁殖のための縄張りを維持・主張するための鳴き声」と説明します。

次に聴いたのは、「ここにいるよ」と仲間に伝えるときの鳴き声。うっそうと木々が生い茂る森のなかにいるときは、仲間がどこにいるのかわからないため、「この鳴き声をしょっちゅう鳴き交わして、仲間の位置を確認している。そうやって絆を保っている」と鈴木さん。

次に聴いたのは、「こっちを見て」という鳴き声。これは仲間の注意を自分に集めるときなど、木のなかに逃げ込んだときに「(敵が来ないか)見ていて」と伝えたり、いい食べ物を発見して「ここだよ」と仲間に知らせたりするときに使う鳴き声だそう。

そして、「警戒しろ」「集まれ」という2つの言葉を組み合わせた長めの鳴き声も。シジュウカラは、モズやフクロウなどの天敵を見つけると群れを成して追い払うことがあるそうで、天敵を追い払うために仲間を呼び寄せるときに、この2つの言葉を使うことを発見したと言います。

ちなみに、シジュウカラの言葉の種類は「ちゃんと論文になっていないものも含めると、おそらく20個ぐらいの単語を持っていて、それを自由自在に組み合わせて200パターン以上の会話をおこなっているのではないか」と鈴木さん。

さらには、「(言葉を)組み合わせる力があるから、いろいろな表現ができる。鳴き声を組み合わせる文法の力は、ほかの鳥ではほとんど見つかっていないし、まだわかっていない」と話し、さらに研究が進めば「人間の言葉と動物の鳴き声に共通点がみられるのではないか、と思っている」と私見を述べました。

シジュウカラのさまざまな鳴き声を聴いたホランは、「(鳴き声の)パターンが全然違う! 鈴木さんの解説なしに自然のなかで聴いたら、種類の違う鳥がいるんだなと思っちゃう。同じ鳥の鳴き声だとは思わないかも」とビックリ。「今回聴いたのはほんの一部なので、来週もシジュウカラが何を話しているのかを、みなさんといろいろと探っていきたい」と興味津々の様子でした。

この日聴き比べをしたシジュウカラの鳴き声は、「radikoタイムフリー」で聴くことができますので、ぜひチェックしてみてください。

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