2025年05月03日
今夜ゲストにお迎えしたのは、日本産、第3極のAI開発者であり、横河デジタル株式会社の研究者で社長の、鹿子木宏明さんです。
鹿子木さんは、1968年、熊本県のお生まれです。
東京大学大学院で、理学博士を取得後、1996年にマイクロソフトに入社され、機械学習アプリケーションの開発等に携われました。
2007年10月、横河電機に入社。
プラントを含む製造現場へのAIの開発、適用、製品化等を手掛けられます。
強化学習技術を使ったAIアルゴリズム(FKDPP)の開発者のお一人であり、横河電機IAプロダクト&サービス事業本部インフォメーションテクノロジーセンター長を経て、2022年7月より、横河デジタルの代表取締役社長でいらっしゃいます。

──少ない試行錯誤で学習するAI
茂木:今回ディスカヴァー・トゥエンティワンより発売されました、ご著書『「強いAI」による AIファーストの実現』ということで、大変面白く拝読しました。
鹿子木社長のお仕事は、製造現場に特に応用が可能だと思うんですけど、「Factorial Kernel Dynamic Policy Programming」…訳して「FKDPP」、こちらをリスナーの方に分かりやすく伝えると、どうなるんでしょうか?
鹿子木:FKDPPは、その前にいくつか歴史がありまして、どういった用途に使われていたかと言うと、ロボットに使うAIだったんです。例えば、Tシャツを上手に畳む方法とか、あるいはペットボトルのキャップを開ける方法を、色んな試行錯誤をして自分で見つけるんですね。そういうAIだったんです。
特徴は、ロボットが10回とか30回ぐらい試行錯誤すると、ペットボトルの開き方とかTシャツの畳み方を見つけるというものだったんですが、何故それを製造現場の、例えば化学プラントや石油プラントに応用できると思ったかと言うと、結局ロボットのAIは、10回ぐらいで成果を出さないとあんまり意味がないんです。

茂木:試行錯誤をたくさんやると困るということですね。
鹿子木:1万回もTシャツを畳むとボロボロなりますし。ですので、「いかに早く覚えるか、学習するか」を突き詰めたものだったんです。
一方で、石油プラントとかそういったものに使うAIも、1万回とか100万回とか試行錯誤できないじゃないですか。
茂木:そうですよね。
鹿子木:10回とか、あるいはそれ以下でできる技を学ぶようなものが必要となったので、「これはいけるんじゃないか」ということで研究するようになりました。
茂木:すごく画期的なことだということですね。実はこの技術なんですけども、第52回日本産業技術大賞において、内閣総理大臣賞を受賞した、と。大変高く評価されているということですよね。
鹿子木:そうなんです。あれは本当にびっくりしまして。日本産業技術大賞の内閣総理大臣賞と言うと、例えばSuicaとか、東京スカイツリーとか、スパコンの富岳とかが獲っている賞なんですよ。
茂木:すごいですね…!
この「カーネル」というのも大変奥深い概念ですが…。カーネルは、ざっくり言うとどういうことですか?
鹿子木:実は「カーネル法」というものが、このFKDPPの中核にかなりあるんですけれども。
元々は、1990年代ぐらいに「花の種類を上手く見分ける」というようなAIが作られて、実はそれが第3次AIブームの先駆けになって扉を開いたんですけど。要は、一番シンプルなルールを見つけてこようとする手法なんです。
ただ現実社会は、そんなシンプルなルールばかりじゃありません。花の形とかも、全然複雑な関係があったりするので。
それを数学の手法で、無限次元にバーッと発散させて、無限の空間の中で「花の分け方はこうだ!」という簡単なルールを見つけて、現実世界に戻すと、ピシッと分けられる。まぁ、ちょっと難しいんですけどね(笑)。
茂木:化学プラントなどでも色々変数がたくさんあると思うので、そういうのを最適化するには本当は無限次元で表現しなきゃいけないんだけど、その表現を直接扱うことなく、上手く数学的に最適解を見つけられるということですね。

鹿子木:はい、そうですね。
茂木:これはすごい発明だと思うんです。皆さんにも鹿子木社長が凄い方だということが、何となく伝わってきたと思いますが(笑)。
メディアの報道を見ていますと、日本はAIについては特に押され気味なイメージがあると思うんですけど、どうしたら日本がこれから良くなりますかね?
鹿子木:特に、日本の製造業だったり、あるいは漫画とかの分野でも、「匠の技」と言いますか、AIでは簡単な計算でできなくて、「ここはこういうふうにしないと美味しいビールができないんだ」とか、「ここはこういう要素を入れないと面白い漫画にならないんだ」とか、そういうものがすごく大事だと思うんですね。特に海外と比べた時、差別化要素という意味で。
そこを最大限生かせるような技術の使い方が一番いいと思っていて、それで「弟子AI」でそういう匠の人とか素晴らしいクリエイターの人を助ける、というようなものが一番いいんじゃないかなと、私は考えてます。
茂木:素晴らしいですね。皆さん、是非、今回お書きになられました『「強いAI」による AIファーストの実現』、本当に面白い本ですので、お読み頂けたらなと思います。AIは、もはや単なる道具ではない、と。
『「強いAI」による AIファーストの実現』をこれから読みたいと思っている読者の方々に、メッセージを頂いてよろしいでしょうか?
鹿子木:はい。『「強いAI」による AIファーストの実現』と、かなり刺激的なタイトルになっているんですけど、実は中身は、第1章では「生物の脳とAIを比較しましょう」というようなところから入るんです。
茂木:面白いですよね。子育てにもヒントになるような。
鹿子木:そうですね。子育ての時の親だったり、あるいは、「最初の脳はホヤの赤ちゃんが持っていた」、と。そういったところから入っていって、「じゃあ、それに適するAIというのはこういう形なんだろう」というような話を展開していますので、是非お読み頂ければと思います。

●横河デジタル株式会社 公式サイト
●「強いAI」による AIファーストの実現 / 鹿子木宏明 (著)
(Amazon)
●ディスカヴァー・トゥエンティワン 公式サイト
鹿子木さんは、1968年、熊本県のお生まれです。
東京大学大学院で、理学博士を取得後、1996年にマイクロソフトに入社され、機械学習アプリケーションの開発等に携われました。
2007年10月、横河電機に入社。
プラントを含む製造現場へのAIの開発、適用、製品化等を手掛けられます。
強化学習技術を使ったAIアルゴリズム(FKDPP)の開発者のお一人であり、横河電機IAプロダクト&サービス事業本部インフォメーションテクノロジーセンター長を経て、2022年7月より、横河デジタルの代表取締役社長でいらっしゃいます。

──少ない試行錯誤で学習するAI
茂木:今回ディスカヴァー・トゥエンティワンより発売されました、ご著書『「強いAI」による AIファーストの実現』ということで、大変面白く拝読しました。
鹿子木社長のお仕事は、製造現場に特に応用が可能だと思うんですけど、「Factorial Kernel Dynamic Policy Programming」…訳して「FKDPP」、こちらをリスナーの方に分かりやすく伝えると、どうなるんでしょうか?
鹿子木:FKDPPは、その前にいくつか歴史がありまして、どういった用途に使われていたかと言うと、ロボットに使うAIだったんです。例えば、Tシャツを上手に畳む方法とか、あるいはペットボトルのキャップを開ける方法を、色んな試行錯誤をして自分で見つけるんですね。そういうAIだったんです。
特徴は、ロボットが10回とか30回ぐらい試行錯誤すると、ペットボトルの開き方とかTシャツの畳み方を見つけるというものだったんですが、何故それを製造現場の、例えば化学プラントや石油プラントに応用できると思ったかと言うと、結局ロボットのAIは、10回ぐらいで成果を出さないとあんまり意味がないんです。

茂木:試行錯誤をたくさんやると困るということですね。
鹿子木:1万回もTシャツを畳むとボロボロなりますし。ですので、「いかに早く覚えるか、学習するか」を突き詰めたものだったんです。
一方で、石油プラントとかそういったものに使うAIも、1万回とか100万回とか試行錯誤できないじゃないですか。
茂木:そうですよね。
鹿子木:10回とか、あるいはそれ以下でできる技を学ぶようなものが必要となったので、「これはいけるんじゃないか」ということで研究するようになりました。
茂木:すごく画期的なことだということですね。実はこの技術なんですけども、第52回日本産業技術大賞において、内閣総理大臣賞を受賞した、と。大変高く評価されているということですよね。
鹿子木:そうなんです。あれは本当にびっくりしまして。日本産業技術大賞の内閣総理大臣賞と言うと、例えばSuicaとか、東京スカイツリーとか、スパコンの富岳とかが獲っている賞なんですよ。
茂木:すごいですね…!
この「カーネル」というのも大変奥深い概念ですが…。カーネルは、ざっくり言うとどういうことですか?
鹿子木:実は「カーネル法」というものが、このFKDPPの中核にかなりあるんですけれども。
元々は、1990年代ぐらいに「花の種類を上手く見分ける」というようなAIが作られて、実はそれが第3次AIブームの先駆けになって扉を開いたんですけど。要は、一番シンプルなルールを見つけてこようとする手法なんです。
ただ現実社会は、そんなシンプルなルールばかりじゃありません。花の形とかも、全然複雑な関係があったりするので。
それを数学の手法で、無限次元にバーッと発散させて、無限の空間の中で「花の分け方はこうだ!」という簡単なルールを見つけて、現実世界に戻すと、ピシッと分けられる。まぁ、ちょっと難しいんですけどね(笑)。
茂木:化学プラントなどでも色々変数がたくさんあると思うので、そういうのを最適化するには本当は無限次元で表現しなきゃいけないんだけど、その表現を直接扱うことなく、上手く数学的に最適解を見つけられるということですね。

鹿子木:はい、そうですね。
茂木:これはすごい発明だと思うんです。皆さんにも鹿子木社長が凄い方だということが、何となく伝わってきたと思いますが(笑)。
メディアの報道を見ていますと、日本はAIについては特に押され気味なイメージがあると思うんですけど、どうしたら日本がこれから良くなりますかね?
鹿子木:特に、日本の製造業だったり、あるいは漫画とかの分野でも、「匠の技」と言いますか、AIでは簡単な計算でできなくて、「ここはこういうふうにしないと美味しいビールができないんだ」とか、「ここはこういう要素を入れないと面白い漫画にならないんだ」とか、そういうものがすごく大事だと思うんですね。特に海外と比べた時、差別化要素という意味で。
そこを最大限生かせるような技術の使い方が一番いいと思っていて、それで「弟子AI」でそういう匠の人とか素晴らしいクリエイターの人を助ける、というようなものが一番いいんじゃないかなと、私は考えてます。
茂木:素晴らしいですね。皆さん、是非、今回お書きになられました『「強いAI」による AIファーストの実現』、本当に面白い本ですので、お読み頂けたらなと思います。AIは、もはや単なる道具ではない、と。
『「強いAI」による AIファーストの実現』をこれから読みたいと思っている読者の方々に、メッセージを頂いてよろしいでしょうか?
鹿子木:はい。『「強いAI」による AIファーストの実現』と、かなり刺激的なタイトルになっているんですけど、実は中身は、第1章では「生物の脳とAIを比較しましょう」というようなところから入るんです。
茂木:面白いですよね。子育てにもヒントになるような。
鹿子木:そうですね。子育ての時の親だったり、あるいは、「最初の脳はホヤの赤ちゃんが持っていた」、と。そういったところから入っていって、「じゃあ、それに適するAIというのはこういう形なんだろう」というような話を展開していますので、是非お読み頂ければと思います。

●横河デジタル株式会社 公式サイト
●「強いAI」による AIファーストの実現 / 鹿子木宏明 (著)

●ディスカヴァー・トゥエンティワン 公式サイト