Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.290 作家 阿川佐和子さん

2018年10月20日

今週ゲストにお迎えしたのは、角川書店より「ことことこーこ」を刊行されました、作家の阿川佐和子さんをお迎えしました。

阿川さんは、1953年生まれ、東京都生まれ。
慶応義塾大学ご卒業後、報道番組のキャスターなどを務める。
その後、渡米し、帰国後、エッセイスト、小説家として活躍。

1999年に壇ふみさんとの往復エッセイ「ああ言えばこう食う」で、講談社エッセイ賞、
2000年「ウメ子」で、坪田譲治文学賞、
2008年、『婚約のあとで』で、島清恋愛文学賞を受賞。

2012年に刊行された、『聞く力 心をひらく35のヒント』は170万部を突破する、大ベストセラーを記録し、2014年に、菊池寛賞を受賞されました。

現在も、作家のみならず、インタビュアー、女優など、
マルチにご活躍中でいらっしゃいます。

今週は、最新本「ことことこーこ」を中心にお話しを伺いました。


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──「ことことこーこ」というタイトルには

茂木:主人公のお母さんである「ことこ」と、主人公の「こーこ」が組み合わさって、
タイトル「ことことこーこ」ということで、タイトルはいつ頃、決められたのですか?

阿川:「ことことこーこ」というタイトルはダブルミーニングにしてるんですけど、
最初に「こーこ」という主人公の女性の職業がフードコーディネーターで、料理を作ることを仕事にしているので、煮込み料理みたいに鍋がコトコト…というのをかけて「ことことこーこ」っていう風にしたんです。
だけど、この小説のテーマは「こーこ」の母親が認知症になって、だんだんものを忘れていくという、そのお母さんとの対峙問題っていうか、介護問題がもうひとつのテーマなので、お母さんの名前を「ことこ」にしたんです。

茂木:後からその名前にしたんですか?

阿川:そう。後からそうしたんです。「ことことこーこ」っていうタイトにしようと思った時に、母親と娘っていう。大きなメインのテーマもあるから、読み方を変えると「ことこ」っていう人と、「こーこ」っていう人の
母と娘の関係っていう風にして捉えてもいいタイトルになるね、って。

茂木:すごい! これはネタバレになるから言わないですけど着地というか。
ピタッとはまる瞬間があって。作家って最初からここを考えて書いてるんだって思ったんですけど…。

阿川:考えてない…(笑)

茂木:考えてなかったんですか(笑)。そのわりにはもうウルトラC! ”月面宙返り”みたいにピタッと来ました。
この作品は、2年前の2016年9月から、今年の3月まで、徳島新聞など、11の新聞社で連載されていたものだそうですね。
連載とは思えない繋がり、構成の見事さというか。書き下ろしかと思いました!
「ことことこーこ」は、多くの方が関心を持っている認知症。そして介護の問題を扱われているんですけど、ご自身もそういう経験をされているんですか?

阿川:私がそれなりの歳で、親もそれなりの年になっていくと、いつかは介護をやらなきゃいけないのかな、っていう風に薄々感じたりしていたんですけれど。
父は2015年の夏に亡くなりまして、それよりちょっと前ぐらいから母が普通のもの忘れじゃないぞっていうような状況が始まって。さて、どうするっていうことでひとつずつ解決というか、方策を考えるっていう生活がもう8年ぐらいになるんですよ。
そういう日常の中で色々な事件が起こったり苦しいこともあるけどおかしいこともあって。
実際に今、日本高齢化社会としては世界に冠たるものなんですってね。

茂木:課題先進国と言われてますけどね。

阿川:普通はピラミッド状の人口分布で、高齢者の人口っていうのは少ないのが普通ですよね。
世界人口では今65歳以上の高齢者が8.2%なんですって。なのに日本は特殊でピラミッドにはなってなくて65歳以上の高齢者の数は全体の。28%ってこの間聞いて愕然としました!

茂木:大変なことですよね。

阿川:2年後のオリンピックのときには日本人の女性人口は半分が50歳以上になるんだって!仰天しちゃう!
だから、高齢者ビジネスってすごく盛んだし、一般の家庭の中でも介護の問題を抱えてる人は山のようにいて。
だからこそ、音楽とか映画とかドキュメンタリー映画とか小説も、介護ものがすごく増えてきてると思うんです。
その中に、私が自分の親のことをちょっと小説に
書いてみるっていう手はあるかなと思ったんだけども、介護のこと考えるとただひたすら暗い!辛い!自分が書いても読んでも辛いっていう風になるのはイヤだから、
なんとか明るい介護小説書けないかなと思って。で、母の性格は基本的に明るいんですが、見てると笑っちゃうことがいっぱいあるんで、こういうエピソードをつなげて本質は暗いんだけれども、楽しいものも時々あるよっていうことが伝わるような小説を書いてみたいなと思ったのかひとつの起因ではありました。

茂木:主人公がテレビのフードコーディネーターということで仕事と介護の両立に悩まれるわけですけど、
阿川さんもこんなにお忙しいのに、お母さんの事も色々やってらっしゃって。やっぱり、主人公にそこらへんは投影されてるんですか?

阿川:もちろんそうです。私一人でやったわけじゃないし、私は介護の世界の苦しんでる人たちの中では本当に端っこの楽な生活をしてると思うんですけど、
それでもやっぱり父が入院し、母がこういう風になったときに両方を行き来しなきゃいけない。その時に助けてくださった人は山のようにいて。だから仕事も続けられたんだけどもその時に気がついたのはやっぱり一人で全部抱えると、自分が一生懸命になって仕事も忙しくて肉体的にも疲れているのに「ありがとう」の一言も言ってもらえないとか、欠点ばっかりあげつらわれるとか。報われないことの方が多いんですよ。
僕はお母さんに本当にお世話になったから仕事を辞めて精一杯尽くします!みたいな人いるけど、それはやめたほうがいい。
自分の気分転換になる場所とか、介護っていう場面もあるけど仕事の場面が辛くなると、ちょっとぼけたお母さんの前で心が安らぐかもしれない。
介護が辛くなると仕事の場面で「君、よく頑張った!」って言われて嬉しくなる場面があるかもしれない。
趣味でもボランティアでもいいし、二、三つぐらい自分の場面を持っていて、何かをやんなきゃいけない時に全部やめちゃうと想う人が多いけど、それはかえって辛くなると私は思います。


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茂木:「ことことこーこ」、文学として本当に面白くて素晴らしいんですけど、一方で介護について”こういうことがあるんだ”とか、”こういう行動とればいいんだ”って参考になるっていう人が多いと思うんですよね。
例えば、いつどういうタイミングでご家庭じゃなくて、いわゆる施設みたいなとこに入っていただくかとかいうこともすごくリアルに描かれているじゃないですか。

阿川:それはその家々の事情があると思うし、他人が決められることとかマニュアルにすることじゃないと思うんですけれども、
私はただ、この本でうちの母を見てるときも思ったんだけども、介護する側の便宜っていうのが優先されることの方が多くて。
だけど、介護される側の気持ちは完全に何も分かんなくなっちゃってるわけじゃない段階だとはっきり認識してることもいっぱいある。
そのときに、「はい、あなたはもう役に立たない人間になりました。あなたは何も覚えてないから家事一切やらなくていいです。その代わりこの施設に入ってください」
って言って、一日ベッドに寝てなさいって言われたら心が傷つくと思うんですよ。
できる事ってまだ残ってて、そういう時には多少その部分で楽しむとか、頼りにするとか。
うちの母は家の庭がすごく好きだったんで、庭いじりをまだ楽しみにしている間はこの家から離したら可哀想だな、と未だに庭のある家に住んでますけどね。完全に庭なんかどうでもよくなっちゃったらこちらの便宜も考えた方が良いけど、
その塩梅を介護する側のシステムだけを押し付けるっていうのはちょっと違うんじゃないかなと思っています。

茂木:なるほど。

阿川:この小説には徘徊の場面があって、母は徘徊してないんですけども、
あるとき、ある専門家に「徘徊する人間は、徘徊するにもちゃんと理由があるんです」って言われて。目的を持って家を出るんですけど、一般の人間は頭がおかしくなっちゃったと思うんですよね。
だけど本当は、自分の中の意識に”何かをやりたい”っていう気持ちが残っている限り、それは完全に頭がおかしくなっちゃったこととは違うっていうことを理解したいと思って、徘徊する側のお母さんの語りで場面を書いてみたんです。

茂木:「ことことこーこ」は時々、お母さんの視点で書かれることがあるんですよね。そこがとても良い!

阿川:もし、ボケちゃったらこんな感じじゃないかなって思って書いてみました。

茂木:あらゆる年齢層に読んでほしいですね。


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Dream HEART vol.290 阿川佐和子
放送されなかった未公開エピソード満載です!
ぜひ、podcastもお聴きください!

KADOKAWAオフィシャルサイト

●ことことこーこ / 阿川佐和子 (角川書店)


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来週も引き続き、作家の阿川佐和子さんをゲストにお迎えいたします。
どうぞお楽しみに。
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