Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.303 慶應義塾大学医学部 小児科教授 高橋孝雄さん

2019年01月19日

今週ゲストにお迎えしたのは、慶應義塾大学医学部 小児科教授 高橋孝雄さんです。

1957年生まれ、現在、慶應義塾大学医学部で、小児科の主任教授としてご活躍中です。
専門は小児科一般と小児神経。
1982年、慶応義塾大学医学部を卒業後、アメリカのハーバード大学、
マサチューセッツ総合病院の小児神経科で勤務され治療にあたられました。
ハーバード大学の医学部では、神経学の講師も勤められました。
その後、1994年に帰国、慶應義塾大学小児科で、医師、教授として勤めていらっしゃいます。

そして昨年の9月、マガジンハウスから刊行された、
「小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て」がベストセラーとなり、話題を集めていらっしゃいます。

そんな、高橋孝雄さんにお話を伺いました。


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──著書「小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て」

茂木:まず、著書「小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て」の、この表紙の写真が素敵ですね。

高橋:ありがとうございます。

茂木:赤ちゃんを抱っこされていて。普段いろんな赤ちゃんを治療の時は見られると思うんですけど、お子さんとか赤ちゃんは好きなんですか?

高橋:治療の時に抱っこするというよりは、治療の合間に抱っこさせていただく。あまりに可愛いので(笑)。
これは治療行為ではないですね、これはの私の息抜きです。患者さん、特に小さな赤ちゃんは診察中に抱っこさせていただくことが多いですね。

茂木:もちろん相談があっていらしてるんでしょうけど、やっぱり赤ちゃんとか子供のパワーみたいなのはすごいですよね。

高橋:すごいですね〜、可愛いですね〜(笑)。

茂木:帯にもありますけれども、「小児科医36年間の経験に基づく」ということで、いろいろなお子さん、赤ちゃんをご覧になって来られたと思うんですけど。
僕が世間からいろいろ聞くのは、小児科医って大変なお仕事で、なかなか小児科医になるお医者さんが減ってきちゃってる、っていうようなことも聞くんですけど。
そのあたりはどうなんですか?

高橋:仕事に“大変だ、大変じゃない”っていうのはないと思いますけどね。本当に体に悪いくらい大変なのは、嫌々やってる仕事だと思います。

茂木:なるほど(笑)。

高橋:僕は小児科医になりたくて小児科医になってるわけですね。特に小児科医は何か理由があって、なりたくてなってるんだと思うんですね。
他にいろんな科がある中で、小児科医になりたいと思ってなってる先生がほとんどですから、好きでやってますよね。ですから、大変だっていうのはおこがましいと思います。

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茂木:ありがとうございます。そう言ってくださって本当にありがたい気持ちと、嬉しい気持ちがあるんですけど。
この本の最初の方のチャプター、お母さんが皆さん気にされるところだと思うんですけど。
「親から受け継いだもの」遺伝のことについていろいろ書かれているんですけど、例えば「いきなりトンビがタカを生むは遺伝的にはありえません」ということなんですけど、これはどういうことですか?

高橋:いや、生まないですよね。人間もトンビを生まないし、遺伝子っていうのはすでに決まってるわけですから。
人は人の遺伝子によって、人という種を維持しているわけなので。“医学的”と、言うまでもないことだと思うんですね。
ただ、トンビがタカを…という話になった時には、人の中で能力の差とか、特技の差というものが遺伝子で決まっているので、そこは変えられない、というようなイメージで受け取っておられる方もいらっしゃると思うんですね。
裏を返せば、トンビがトンビしか生まないということは、タカや人間が生まれる危険がないということですよね。

茂木:なるほど!

高橋:私、最初のところで一番申し上げたかったのは、遺伝子というのは変わらないで、そこにずっといることで我々を守ってくれている、そういうことをお伝えしたかったんです。

茂木:だからこそ安定するということですよね。この「体重300グラムで生まれた赤ちゃんも、遺伝子に守られ、力強く生き抜きます」という、ここが印象的だったんですけど。
脳のシワがまだ完全にはできてない状態で、未熟で生まれても、ちゃんとそれができていくという。遺伝子の働きがすごいなという事が書かれているんですけど。

高橋:茂木さんは脳科学者だからご存知だと思うんですど、動物には脳にシワがある動物と、シワが無い動物で大きく分かれるんですね。
ネズミはシワがない脳の動物、人はシワがある。シワがあるということは、ある意味人間のアイデンティティなわけです。でも、それはお腹の中にいるときに最初からシワがあるわけではないんですね。
300グラムというと、妊娠22週、23週ぐらいで生まれてきた赤ちゃんなんですが、彼らの脳はシワがないんです、ツルツルの状態です。そこで生まれてきて、保育器に入って酸素を与えられて、人工呼吸を受けて、抗生物質を打たれて、あるいは強心剤を打って、そういう状況でゆっくりゆっくり体重を増やしていった時に、お家に帰る頃には、僕や茂木先生と同じようにまったく同じパターンで脳にシワが出来上がるんですね。

茂木:うんうん。

高橋:これは環境要因で決まっていたら、こんなこと実現できるわけないと思うんです。遺伝子が大丈夫だと、任せておけと、ちゃんと脳にはシワができるようにシナリオが書けているんだと、一番実感できる場面なんですね。

茂木:この本の中で、どのお子さんも親から受け継いだ素晴らしい素質を持っているので、親はその才能が花開くのを温かく見守るだけでいいんだって、この言葉が、今、お母様方の早期教育とか、才能の開発みたいなことで頑張りすぎちゃってるところがありますもんね。

高橋:そうですね、頑張るのは悪くないと思うんですよ。それから、早い時期に何かやらせてみるのも全然悪いことじゃない。多くは失敗するんですけど、失敗してもいいと思うんですね。
僕は、これはやめた方がいいんじゃないかなと思うのは、子供にいろいろチャレンジさせる過程で、最終到達目標のようなものを親が勝手に設定しないことだと思うんですね。
そこにいくまで頑張らせるとか、始めたからには続けさせるとかですね、それは子供が決めることであると思うんです。
多くの早期教育の目標は、他の子供達よりも早く、そして高く到達するということだと思うんですが。早くはさておき、高くはないんだよってことを話したかったんですね。

茂木:これも読んでて“なるほど”と思ったんですけど「理想の母を追い求めないで、子供が好きなのは今のお母さん」って、この項目もすごくいいですよね。

高橋:僕ら自分のことを思い出しても、お母さんを嫌いなわけなかったですよね? お母さんのこと嫌い、お父さんのこと嫌い、っていう子供はいないです。
よほどのことがあっても嫌いじゃないし、虐待を受けている子供達にたくさん出会うんですけど、最後まで母親、父親をかばいますよ。どういう気持ちでそういう風になっているのかは、僕は未だに理解できないところはあるんですけれども。
ただ、“今のお母さんはこれじゃおかしい、困る”って思ってる子は少ないんだと思うんですね。だから、お母さんは無理に自分を変える必要はないと思います。


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「『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』高橋孝雄 著 - マガジンハウス 」


●小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て / 高橋孝雄

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次回のゲストは、引き続き、慶應義塾大学医学部 小児科教授 高橋孝雄さんです。
お楽しみに!