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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.311 社会学者・古市憲寿さん

2019年03月16日

今週ゲストにお迎えしたのは、社会学者の古市憲寿さんです。

<古市憲寿さん・プロフィール>

古市さんは、1985年、東京都生まれ。
慶應義塾大学 環境情報学部をご卒業後、
東京大学大学院 総合文化研究科 国際社会科学専攻
相関社会科学コース修士課程に入学し、修了。

若者の生態を的確に抽出し、クールに擁護した著書「絶望の国の幸福な若者たち」などで注目されます。

その後、慶應義塾大学SFC研究所上席所員や、
安部内閣の「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」委員、
内閣府「クールジャパン推進会議」メンバーなどを務めていらっしゃいました。

そして、初の小説「平成くん、さようなら」で、
第160回芥川賞の候補に選ばれ、話題を集めました。

今週は、著書「平成くん、さようなら」について、お話を伺いました。


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──平成という時代を生きる

茂木:「文學界」に掲載されたということは、文藝春秋は(芥川賞を)取らせる気だったんじゃないんですか?

古市:出版社は売れてくれたらいいなと思っていたと思いますけど、元々賞狙いというよりも、前から「文學界」の方から小説書いてみないかってことを3、4年くらい前から言われていて。
でも、全然書けなくて、別に書く必要もないなと思っていたんです。書きたいものはエッセイとかとか評論で書けばいいから、小説の必要がないなって思っていたんですけど、
たまたま1年半くらい前に祖母が亡くなって。その時のことを書いたのが「平成くん、さようなら」の一つ前の作品なんですね。
それは雑誌に載ったんですけど、それから死をテーマに書こうかなと思って書いてみた2作目が「平成くん、さようなら」ですね。

茂木:安楽死がテーマになっていて、安楽死が合法化されているという設定の作品ですけれど…。

古市:2018年、19年の現代の日本が舞台なんですけど、小説の中では安楽死というもの若者を含めて誰でも気軽にできるという設定になってます。

茂木:平成を象徴する人物として、文化人の平成君が出てくるんですけど、これは古市さんご本人がかなり投影されてます?

古市:部分的にはそうですね。セックスが嫌いとか。

茂木:嫌いなんですか?

古市:そうですね。人付き合いは好きなんですけど、わざわざ粘膜の交換とかはしたくないというか。そういうところは投影させてますね。

茂木:キャラクター造形としてはそういう部分が近いし、テレビ出演をはしごしたりとかっていう部分も近いですよね。

古市:人物の設定として、ある種文化人というか。
テレビに出たりするという意味では結構近いところはたくさんありますね。

茂木:彼女との関係もかなり近いんですか?

古市:彼女は特定のモデルが一人いるっていうよりも、いろんなモデルの中で作っていたんですけど、
フィクションとノンフィクションの真ん中みたいな感じですね。

茂木:今回、安楽死をテーマにしたのはどういう思いがあるんでしょう?

古市:死って、いくらテクノロジー発達しても僕らが避けられない問題じゃないですか。
今って住む場所も自由に決められるし、仕事も自由に決められる。でも、いつ死ぬかだけは日本で生きてる以上は自由になかなか決められない。
選択肢として、安楽死というものがもっとあってもいいんじゃないかなっていう発想が生まれたんですね。
みんなにそれを強制するわけじゃなくて、社会に生きる選択肢として安楽死があったらどうなるんだろうっていう思考実験が一つと、
平成という時代を描こうと思ったんですけど、平成って未来に命をつなぐ出生率というものがどんどん下がり続けて、逆に若者の自殺率がすごい増えてるんですよね。
ここ最近、20代30代前半の死因の1位がずっと自殺なんですよ。だから、平成という時代がある意味安楽死的というか。緩やかにこの時代が死に向かってるのかなっていう発想もあって、安楽死というテーマを選びました。

茂木:後ろに隠れた意味が色々とあると思うんですけど、小説としては女の子の戸惑いの気持ちもすごくわかるし、平成くんの姿の消し方もすごく工夫があって、アイディアがすごいですね!

古市:どんな風な最後にしようかっていうのは初めから決めていて。自然と死を望む平成くんと、それを止めたい愛ちゃんの物語になりましたね。

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茂木:平成という時代が終わろうとしてますけど、古市さんにとって平成ってどういう時代でした?

古市:僕は物心ついた頃にオウムの事件があったりとか阪神淡路があったりとか、色々思い出せる出来事はあるんですけど、
総じて平和だったと言っていいんじゃないですかね。テロとか災害が多かったけれども、昭和のような大戦争はなかったわけじゃないですか。それだけでもすごく悪くない時代だったのかな、と思いますね。

茂木:メディアからも古市さんは平成を象徴する存在だと見られているじゃないですか。その辺りどうですか?

古市:でも僕、本当は平成生まれじゃないんですよね。

茂木:そうだったんですか!

古市:昭和60年生まれなんですよ。平成育ちっていう言い方でごまかされてますけど(笑)。
逆に言えば、平成生まれって平成1年のこと覚えてないじゃないですか。ギリギリ平成のことを覚えてるので、平成を生きてきたっていう意味では嘘ではないと思います。
でも今ってみんなスマホを持っていて、動画も撮りまくっててアーカイブがたくさん残っているじゃないですか。
元号としての平成が終わっても、ずっと参照できる時代だと思います
個人のアーカイブをつなぎ合わせたら、平成って膨大なアーカイブが時代として残されていて。平成っていつまでも参照され続ける時代なのかなって気がしますね。

茂木:なるほどね。

古市:それが「平成くん、さようなら」の最後とも関係しているんですけど…。
本当に人が死ぬということはできるのか。本当に時代は終わるのかっていうテーマは小説の最後とも関係してますね。

茂木:社会学者として考えると、平成の日本、これから日本はどうなるとを予想してますか?

古市:元号と時代って本当はあまり関係ないんですよね。むしろ、少子高齢化であるとか、人口動態の話の方が本当は大きくて。
それを考えると、オリンピックとか万博とかで盛り上がってますけど、経済とかってオリンピックや万博ひとつでどうにかなるものでもないので、ある種すごい悲観的な部分もあって。
どう考えても少子高齢化、特に人口のバランスの悪さは2050年ぐらいまで続くじゃないですか。
だから、その時代は決していい時代ではないだろうなっていう悲観と、一方で、とはいえテクノロジーが何とかしてくれる部分もあるんだろうなっていう楽観もあって。
労働者はどんどん減っていくけれども、AI が代替していくことによってAI に仕事を奪われると怯えることなく、
むしろ労働者が減っていくので、逆にAIを受け入れやすくなるんじゃないかという楽観的な思いもありますね。


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古市憲寿 (@poe1985) | Twitter

●平成くん、さようなら / 古市憲寿 (著)

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来週も引き続き、社会学者・古市憲寿さんをお迎えしてお送りいたします。
お楽しみに!

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