Dream Heart(ドリームハート)

土曜22:00-22:30 TOKYO FM/全国38局でON AIR 各局放送時間

REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.321 「ジーンクエスト」代表・高橋祥子さん

2019年05月25日

今週ゲストにお迎えしたのは、先日発表された「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた、
遺伝子解析サービスを行っている、「ジーンクエスト」の代表、高橋祥子さんです。

高橋祥子さんは、1988年大阪府のご出身。
2010年、京都大学農学部をご卒業。

2013年、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中に、
株式会社ジーンクエストを設立。
生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など、300項目以上におよぶ
遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるベンチャービジネスを展開。

現在は、株式会社ユーグレナ執行役員、
個人遺伝情報取扱協議会理事も務めていらっしゃる、
今、注目の若手起業家のお一人でいらっしゃいます。

今週は、高橋祥子さんが代表を務めていらっしゃいます、「ジーンクエスト」についてお話を伺いました。


null


──医療と遺伝子の関係

茂木:「ジーンクエスト」という会社名にはどんな想いが込められているんですか?

高橋:「ジーン」っていうのは遺伝子で、「クエスト」っていうのは探究なんですね。
個人の方にとってもそうですし、研究も行っているのでアカデミックとしても遺伝子を探求していくということで「ジーンクエスト」という社名になっています。。

茂木:「ジーンクエスト」を立ち上げられたとき、高橋さんはまだ東京大学の大学院に在学中だったということなんですけども、どういう形で起業されようと思ったんですか?

高橋:私は元々研究が大好きで、ずっと大学に残って研究をして将来は教授になろうと思っていたんですけれども、人の遺伝子を研究していくためには、社会を巻き込んで行かないといけないと思ったんですね。
今ある研究成果を使ってサービスを作っていって、それによって研究成果をきちんと社会に提供していくと同時に、データも集まることで結果的に研究も進んでいくと。
そういう仕組みを作りたいということになりまして、それを研究室の先輩と一緒にディスカッションしていたんですけど、研究室の中だけではできないので、外に出て会社を作るしかないよね、ということで会社を作ったんです。

茂木:この株式会社「ジーンクエスト」のホームページには、高橋さんのプロフィールが書かれていて、その中に分子生物学と同時に統合オミクスと書いてありますが、統合オミクスというのはどういうものなんでしょう?

高橋:オミクスというのは、ゲノミクスとかプロテオミクスとか色々な分野があるんですけれども、遺伝子ですとかたんぱく質とか生体の分子情報のビッグデータですね、それを統合して解析していきましょうという学問領域なんです。
私の場合は特に生活習慣病の予防のメカニズムというのを遺伝子レベル、タンパク質レベル、代謝物レベルのビッグデータを取ってきて、それを解析して研究するということを行っていました。

茂木:なるほど。オミクスというのは、比較的新しい言葉で、タンパク質や遺伝子などの様々な情報を統合的に解析するというアプローチのことなんですね。

高橋:ヒトでいうと、ヒトのゲノムが解読されたのが2003年ですので、その後解析技術というのが飛躍的に発展してきて、ビックデータが取れるようになってきたので発展してきた領域なので、ここ10年15年ぐらい、急速に伸びている研究分野ですね。

茂木:そのような最先端の研究を背景に「ジーンクエスト」を立ち上げられてずっとやってこられてるわけなんですけども、消費者側からすると、どういうことをしていただける会社なんでしょう?

高橋:遺伝子解析サービスというのを提供しておりまして、どういう疾患のリスクが高いかとか、どういう遺伝的な体質なのかというのをお知らせするというサービスをしています。
その情報を知ることで、病気になる前に自分のリスクを知って予防のための行動に役立てていただくと。そのための情報ツールとなっています。

茂木:ホームページを拝見しますと、解析の結果というのは科学的な根拠、学術論文に基づくものであると。

高橋:そうですね。

茂木:科学的な研究として、「ジーンクエスト」は、日本人の遺伝子をたくさん集めるということも医学の研究に貢献するんでしょうか。

高橋:そうですね。今、世界で行われているゲノムの研究の8割以上は欧米系の集団を元にした研究なんですね。
アジア人の方が今は人数としては多いですし、今後も増えていくと考えると、アジアと欧米でいうと遺伝的なバックグラウンドが非常に異なることがわかっていますので、ここの研究をもっと進めていかないといけないという状況なんですね。その中で特に私が興味を持っているのが、日本人って遺伝的なバックグラウンドがすごく均質な特徴を持っているので、研究をするときにノイズが少なくてすごく研究に向いていると言われてるんですね。
なので、これはみんなで持っている宝のようなものなので、それをきちんと研究に活かせるのか、活かせないのかっていうのはまだこれからのところです。

茂木:「ジーンクエスト」で自分の遺伝子を解析してもらうと、生活習慣こうやって変えて健康を保って行こうっていう前向きなこともできるし、今おっしゃっていたように研究にも貢献できるということですね。

高橋:そうですね。そこがすごく大事しているポイントでして、やはり私を含め研究者のメンバーで立ち上げた会社ですので、研究成果をきちんと応用していく、皆さんに役立てていく、それだけではなくてそれによって研究自体も進んでいくっていう仕組みを作っています。

null


茂木:ここまでの話で「ジーンクエスト」のサービスが非常に科学的に綿密で、よく考えられたサービスだということが分かったと思うんですけど、
リスナーの方が、ちょっと遺伝子調べてもらおうかなっていうときにはどうすればいいんですか?

高橋:一般の方にインターネット上でご提供していますので、インターネットで「ジーンクエスト」と検索していただけると、オンライン上で申し込みをすることができます。
ご購入をしていただくとキットがご自宅に届きまして、キットの中に唾液を入れていただいて返送して頂くだけですね。

茂木:それだけなんですね!

高橋:はい。ご自宅で簡単にできます。

茂木:お送りすると、大体どれくらいで届くんでしょう?

高橋:だいたい一か月ぐらいで自分のマイページ上で自分の遺伝子情報を確認できるというものになっています。

茂木:例えば、どういう情報が分かるんでしょうか?

高橋:癌の中でもいくつかあるんですけれども、肺がん、胃がん、大腸がんとか。あとは生活習慣病ですね。高血圧、脳卒中、糖尿病などの遺伝的なリスクがどれくらいあるか。
体質のところでいうと、アルコールの耐性がどれくらいあるかというのが分かりますね。
例えば私の場合は、腎臓結石のリスクが高いタイプで、実は一回発症したことがあるんです。お医者さんに行って、私はなんでこの病気になったんですかと聞いたときに、そんなのわかりませんって言われたんですけれども、自分で自分の遺伝子解析をすると、実は結石のリスクが高いということが分かって。
遺伝要因が50%以上関係するので母に聞いてみると、母も実は若い頃に発症したことがあると、加えて祖母も2回発症したことがあるということが分かって、姉の遺伝子も調べるとまだ発症してないけど遺伝的なリスクが高いということがわかったんです。
今は完治しているんですけれども、結石って再発する人が50%以上いるので、再発の予防のために色々と行動してます。
リスクが高い場合にどういう予防法を取ったらいいかという情報も提供しているんですけれども、例えば結石の場合は、きちんと1日に必要な水分量を取るとか、シュウ酸が原因なのでシュウ酸含量が少ないお茶、緑茶よりもほうじ茶やウーロン茶を選ぶとか。ちょっとした日々の行動変容に繋がっていますね。
病院では知れないような情報が自分の遺伝子を知ることで自分の生活を改善できたので、そこは本当に知っておいて良かったなと思ったことですね。

茂木:知ることで自分に合わせた生活改善を図れると考えるという意味ではすごくいいですね。こういう分野って日進月歩でどんどん知識が変わっていくと思うんですけど、一度、遺伝子配列を解析していただくと、その後のアップデートみたいなのはどうなるんでしょう?

高橋:その後のアップデートを今、無償でご提供していまして。
配列自体は一生変わらないと言われているんですけれども、配列に対する人の知識っていうものはどんどん増えていて、世界中でもいろんな研究がされてますので、新しくこういう項目が分かるようになりましたよ、というのをメールでお知らせして、一生に一回受けていただくだけで新しい情報が届くと。

茂木:一度検査を受けるとそれに基づいて、こういうことが貴方の遺伝子についてわかりましたって教えてくれるのは、嬉しいですね!
あと、祖先のルーツもある程度わかるんですか?

高橋:そうですね。祖先のルーツというのが、ミトコンドリアの遺伝子を調べているんですけど、母親の、母親の、そのまた母親という風に辿っていくと、数万年前に自分の祖先がどの大陸にいたのかという情報が分かるということなんです。

茂木:そうなんですか!

高橋:例えば、私は約3万年前にインドシナ半島の方から来たということが分かっています。

茂木:すごいですね! ロマンを感じます。


null



Genequest【ジーンクエスト】

高橋祥子 (@Shokotan_takaha) | Twitter

●ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?
生命科学のテクノロジーによって生まれうる未来 / 高橋 祥子 (著)