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Dream HEART vol.366 映画監督の三島有紀子さん 「今生きているみなさんに向けて」

2020年04月04日

今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き映画監督の三島有紀子さんです。

三島有紀子監督は1969年生まれ。大阪市のご出身です。

神戸女学院大学文学部を卒業後、NHKに入局されまして、
「NHK スペシャル」「トップランナー」をはじめ、ドキュメンタリー番組を製作。
その後、劇映画を撮るために退局され独立しました。

助監督を経て、2009年、「刺青 匂月のごとく」で劇映画のデビュー。
その後、再婚者同士の家庭の苦悩を描く「幼な子われらに生まれ」で、
第41回モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞と、
第42回報知映画賞では監督賞、第41回山路ふみ子賞作品賞を受賞されました。

その他、代表作に、オリジナル脚本の「しあわせのパン」、「ぶどうのなみだ」や
「繕い裁つ人」、「少女」、「ビブリア古書堂の事件手帖」などがあり、ご活躍中です。

そして、今回の「Red」は、2月21日より公開中です。


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──なぜ今これを発信するのか

茂木:監督の最新映画「Red」、今大評判ですけども、実は三島監督、もともとNHKにいらしたんですよね。NHKに入って「なぜ今この番組なのか」ということが大事なんだ、と言われたんですって?

三島:はい、もうずっと言われていました。私は本当に(ドキュメント番組を)撮りたくて入ったので、毎日毎日企画書を書いていました(笑) とにかく早くディレクターになって撮らせてくれ、と思っていたんです。だから毎日いろんな企画書を書いてたんですけど、「なぜ今これを発信するんだ?」と。
要は、狙いとして「今こういう時代で、人々はこういうふうに感じている時代だから、こういうものを出したいんだ」ということを、一応理屈立てて言えないといけない、という訓練を毎回させられました。

茂木:そういう経験は、映画作りに役に立ってらっしゃいますか?

三島:そうですね。私はNHKにいて一番それが勉強になったことだなと思っています。
映画を作っていて同じ代を生きていて、自分よりもっとすごい方もいらっしゃるし、しかも、黒澤明監督とか今村昌平監督とか、亡くなっているけれども傑作を作られている方がいっぱいいますよね。映画館でその方の傑作をずっと上映してればいいじゃないですか。
でも、今自分が作る意味というのは、今生きているみなさんに向けて、今生きている人たちが抱えてる問題だったり、悩みだったり、そういうことを出して行くということが、今生きている私ができることなんじゃないかな、と思ったんですよね。
だから、今の時代にどういうことが起こっていたりするのかというのを、まずニュースを読んだり、いろんなコラムを読んだり、社会を見るという時間をすごく長く持つようにして知っておく、というのはNHKのお陰だと思いますね。

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茂木:そのNHKを辞めてしまわれたわけですけど、その時点では映画監督になる見込みのようなものはあったんですか?

三島:いえ、全くないですね。33歳でしたけど。

茂木:そこから最初の作品を撮るまでの道のりで、また出会いがあったとか。

三島:出会いしかないです(笑) もう勢いだけで生きているようなものというところがあるんです。

茂木:ある女優さんが監督のことを「野獣みたいだ」って評してるのをどこかで読みましたけど。そういう猪突猛進なところがあるんですか?

三島:そうですね、現場はとても大勢の人間がいるので、「これを何としてでも撮りきるんだ」とか「やりきるんだ」とか「いいものを作るんだ」というのは、やっぱり自分がエネルギーの源になって見せていかなきゃいけない、というのがありますし。
自分の中にはそういうエネルギーみたいなのがありますからね。それが自然とそうなっちゃってるんでしょうね。

茂木:そういう監督だからこそ、ここまで来れたんでしょうね。

三島:いえいえ、本当に出会いですね。
今公開されている「Red」も、一緒に作った女性の荒川さんというプロデューサーとは10年以上前に知り合ってるんです。(出会ってから)一本も(映画を)作ることができていないんですけど、その間に、「今の時代はこういう感じだよね」とか「こういう企画をやれたらいいね」という話を10年間ずっとしてきました。
企画がいいところまで行ったけど通らない、という経験を何回かしてきて、やっと「Red」で公開にこじつけた、という、そういう出会いの積み重ねですね。

茂木:それで傑作ができる、と。我々は劇場で2時間たっぷりと楽しませていただくだけですけど、そういういろんな思いがあるんですね。

三島:映画って、いろんな時の積み重ねが結実するな、と思いますね。

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映画「Red」 オフィシャルサイト


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