Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.399 劇作家・演出家 鴻上尚史さん 舞台「ハルシオン・デイズ2020」

2020年11月21日

鴻上尚史さんは、1958年、愛媛県のご出身。
早稲田大学法学部をご卒業されていらっしゃいます。

1981年に、劇団「第三舞台」を結成し、以降、作・演出を手掛けられます。
1987年、「朝日のような夕日をつれて」で紀伊國屋演劇賞を、
1994年、「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞を受賞、
2009年、『グローブ・ジャングル「虚構の劇団」旗揚げ3部作』で、
第61回読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞されました。

現在は、プロデュースユニット「KOKAMI@network」と、
2008年に若手俳優を集めて旗揚げした「虚構の劇団」での作・演出を中心として、
ご活躍中でいらっしゃいます。

演劇公演の他にも、映画監督、小説家、エッセイスト、ラジオ・パーソナリティ、
脚本家などなど、幅広く活動をされていらっしゃいます。


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──演劇は、体の速度が人間の速度だと教えてくれる

茂木:今、紀伊國屋ホールでやっています「ハルシオン・デイズ2020」。これは一言で言うとどういうお芝居でしょうか?

鴻上:ある男が自粛警察と戦うぞ、という妄想を持ってしまい…。
妄想を持ったのが柿澤勇人くんで、それを止めようとするカウンセラーがいるんですけど、これが南沢奈央ちゃんですね。そこに飛び込んできて、自分の人生を終わらせたいと盛り上がるのが、石井一孝さんというミュージカル界の大ベテランです。それに若い謎の男、須藤 蓮というのが絡むという話ですね。
今回、柿澤くんと「スクールオブロック」の日本版をやろうとしてたんですけど、コロナで中止になって、それで“暇になっちゃったよ”という話になり、“じゃあ、やる?”という話になったんですけど(笑)。

茂木:ああ、そういう経緯なんですね。
本当に素晴らしい俳優さんが出ていらっしゃいます、今行われている舞台「ハルシオン・デイズ2020」。そして、鴻上ワールドは深イイですから、その沼に私も嵌まりたいと思います。
鴻上さんは“いい俳優というのは作者の意図をちゃんと表現できるんだ”ということをおっしゃっていましたが。

鴻上:はい。“俳優の仕事は何でしょう?”と言ったら、所謂“作家の言葉を観客に伝える”というのが俳優の仕事で。要はうかうかしてると、“好感度上げることとか好かれることが俳優の仕事だ”と思ってしまう人がいるので、違うよ、という。やっぱりちゃんと作家の書いたものを一番素敵な形で客席に届けるのが俳優の仕事ですよ、という感じですね。

茂木:僕がNHKの朝ドラにちょこっとだけ出させて頂いた時に、実は鴻上さんの本を買って準備したんですけど(笑)。

鴻上:そうですか(笑)。ありがとうございます(笑)。

茂木:鴻上さんはイギリスのギルドホール音楽演劇学校に、文化庁の…?

鴻上:はい、1年間、文化庁の海外研修で行きました。

茂木:イギリスの俳優さんは、本当に作品によってガラッと変わるじゃないですか。

鴻上:うん。やっぱり羨ましいなと思うのは、基礎レッスンですね。
僕ら日本は、劇団から上がっていく俳優が多いんですね。それは別に悪くないです。劇団から上がって行った俳優は、一癖も二癖も三癖もあるような俳優たちが出てきて面白いんですけど。
イギリスとかアメリカは、演劇学校で3年間ちゃんと基礎を徹底的にやるんですよね。“『演じる』とは一体どういうことか?”、“『演技』というのは一体どういうアプローチが必要なのか?”というのをちゃんとやるので、そうすると、みんな上手い。無名な人でも上手い(笑)。
日本だと、上手い人は有名になっていくんだけど…。本当にちゃんとやっているのがすごいですね。

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茂木:今、「ハルシオン・デイズ2020」を上映されているわけですけど、何で人間は演劇を必要とするんですかね?

鴻上:(笑)。それは、デジタルは結局…、あ、『クオリアと人工意識』読ませてもらいましたよ。面白かったです。

茂木:いやいや、ありがとうございます!

鴻上:何が面白かったって、“AIを追及するというのは、人間が自分自身を知りたいからだ”というのがあるじゃないですか。それで、今時代はますます加速していて、僕らはスマホも手放せられないし、そうすると時代は結局『より速く』『より多くの人に』『より正確に』という3つの原則がどんどん広がっていくんだと思うんですよ。所謂映画だって映画館でやるよりも配信でやった方がいいし、4Gよりも5Gの方がより正確になるし、みたいな。
でも、その流れの中で、演劇は一番アナログなもので。例えば、「バイトします」、新しい仕事の手順をわーっと聞く、「わかったね?」と言われる。僕らはコンピューターを持ってるから、「わかったね?」と言われると、パンッとわからなければいけないような気持ちになるんだけど…。
演劇は何を教えてくれるかと言うと、“人間の速度は体が納得する速度なんだ”と言うか、“体の速度が人間の速度なんだ”ということを教えてくれるから、何千年経ってもなくならないんだろうと思っていますね。

茂木:身体性と結びついているから。逆に言うと、AIとかデジタルの世の中になればなるほど、むしろ必要なのかも。

鴻上:という気がすごくします。
だから、AIが発展して行って、デジタルになっていくことが大事で止められないし、僕らもスマホなんか手放せられないんだけど、だからこそ、自分の身体と向き合う、ということがすごく大切になると言うか。

茂木:なるほど。
今回の「ハルシオン・デイズ2020」は、どういう思いで作って、どういうふうに観て欲しいですか?

鴻上:演劇人はやらないとしょうがないので、本当に大阪を含めて12月の6日の楽日まで感染者を出さないで行けるのか、という。でも僕らは演劇人なので演劇をするしかないので、ぜひ目撃者になってもらえると嬉しいなと思いますね。

茂木:はい。鴻上尚史さんが手掛けていらっしゃいます、舞台「ハルシオン・デイズ2020」は、東京・紀伊國屋ホールで11月23日まで上演されています。大阪公演は12月5・6日の二日間、サンケイホールブリーゼで上演されます。
詳しくは「ハルシオン・デイズ2020」の公式サイトをご覧ください。

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鴻上尚史 (@KOKAMIShoji)Twitter


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