Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.411 キングコング 西野亮廣さん 映画「えんとつ町のプペル」

2021年02月13日

西野さんは、1980年兵庫県のお生まれ。
1999年、梶原雄太さんと、漫才コンビ「キングコング」を結成。

西野さんの活動はお笑いだけにとどまらず、絵本執筆や、ソロトークライブ、
舞台の脚本執筆を手がけ、海外でも個展やライブ活動を行っていらっしゃいます。

2015年には、渋谷のハロウィン翌日のゴミ問題の娯楽化を提案。
区長や企業、およそ500人の一般人を巻き込む異例の課題解決法が評価され、
広告賞を受賞されました。

そのほか、クリエーター顔負けの「街づくり企画」、「世界一楽しい学校作り」など
未来を見据えたエンタメを生み出し、注目を集めています。

そして2016年、絵本『えんとつ町のプペル』を発表。
累計発行部数65万部(2021年1月現在)の大ヒットとなり、
2020年12月には映画化もされ、話題を集めていらっしゃいます。


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──33名のクリエイターによる分業制で作った絵本

茂木:絵本『えんとつ町のプペル』は、総勢33名のクリエイターが集まっているそうですね。

西野:そうです、分業制でやってます。

茂木:もともと西野さんの原画もすごく密度が強くて、あれはペンで描いているんですか? ものすごく描き込んでいますよね。

西野:0.3ミリのボールペンで描いています。

茂木:そこにクリエイターが?

西野:そうですね。僕はボールペンでしか描けないんです。色を塗るのが得意じゃないんですよ(笑)。 だけれども、自分の頭の中にある“えんとつ町”は、色が着いてるんです。
『作家性を出す』ということに重きを置いた時に、1人でやることの方が作家性が出るのか、それとも…。『作家性』はたぶん、僕の脳内の方を指すはずで、「僕が面白いと思っているものがキャンバスにバン、と出る方がいいよな」と考えました。
その時に、分業制の方がいいと思って、色を塗るのが得意な人が僕の代わりに塗ってくれた方が、“えんとつ町”がちゃんと出るのでいいな、と思ったんです。
…みたいな感じで、本当に映画みたいに分業制で絵本を作りました。その時もすごく批判されました。

茂木:絵本を映画のように作ったという。

西野:そうです。だから予算を集めるところからやらなければいけなかったんです。要するに、33人分のギャランティを用意しないと作れないので。

茂木:それがクラウドファンディングですよね。当時、クラウドファンディングがあったんですね。

西野:あったんですけど、やっぱり批判がすごかったですね。日本中がクラウドファンディングをまだ知らなかったので、詐欺か何かかと(笑)。
ざっくり一行で説明すると、『クラウドファンディングで予算を集めて、クラウドソーシングでスタッフを集めて作る』ということだったので、当時は「何言ってるの?」という感じでした。全然理解されなかったです(笑)。

茂木:そういう概念がなかったんだ。
でも今すごく大事なことをおっしゃったのは、『西野さんの頭の中にあったイメージを作る』という意味においては、そこに『作家性』がある、と。これはこの今回のアニメ映画もそうなんですよね。

西野:そうですね。

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──人が作った競争から自分の競争へ

茂木:声優さんたちもまた素晴らしくてね。ルビッチが女優の芦田愛菜さんで、ゴミ人間プペルが俳優の窪田正孝さん。そして、立川志の輔師匠も出ている、という。

西野:立川志の輔師匠のポジションが非常に重要な役割なんです。
ルビッチという主人公の少年に「この煙の向こう側には星があるよ」ということを言う役割なんですよ。誰も信じてないんですけれど、お父さんのブルーノさんだけはそういうことを言うんです。

茂木:真実を伝えるんですね。

西野:実は、この『えんとつ町のプペル』は自分の自叙伝で半生を投影していて。それで言うと、僕は25歳の時に「このままテレビをやっていても余り先がないな」と思い始めていたんですね。
これはテレビに限らず世の中の理(ことわり)だと思うんですが、競争に参加しちゃうと最終的にその競技を作った人にポイントが入っちゃうんです。例えば、テレビ番組で結果を出せば出すほど、その番組が続く、みたいな話で。結果を出せば出すほど、大元が延命していくんです(笑)。
それはそういうものだな、と思っていますが…。

茂木:それが、えんとつ町から出てるあの煙なんだ! 今腑に落ちた!

西野:(笑)。で、どうしたら、って考えたら、たぶんその競争には、自分の名前を売るためにどこかまでは乗らないといけないんですけど、どこかのタイミングで自分で舵を取って、自分の競争をしなきゃいけないな、と思い始めたんです。それが25歳の時です。
とは言え、どうしたもんかなと思っていた時に、志の輔師匠の“志の輔らくご”を観に行かせていただいたんです。そこでの一挙手一投足がもう最高でした。
要するに、僕はずっとテレビをやっていたので、折り合いを付けてやらないといけない仕事が結構あったんですよ(笑)。お仕事としてやらないといけないことが結構あったんですけど。“志の輔らくご”だけは、志の輔師匠が「僕が面白いと思っているものはこれです!」っていうのを全部バーン、と出して、そこを地軸に星が回っているぐらいでした。

茂木:芸術だもんね。

西野:「これが許されるんだ」と思ったんです。でも、考えてみたら、そういうことをしたくてこの世界に入ったな、と思ったんですよ。別にバランサーになりたくてこの世界に入ったわけじゃなくて、自分が面白いと思ったことをバーンとやって「どうだ!」というのをやりたくてこの世界に入ったのに、求められることに応えるとすごく褒められるので、どこかのタイミングでちょっとずつずれていっていて。
ですが、志の輔師匠の落語を観た時に“志の輔師匠のおもろい”を中心にお客さんが集まり、スタッフさんが集まり、それで回っていたので、「こんな世界があるんだ」と思いました。僕にとっては「こういう面白い(≒星)があるよ」と見せてくれた人なので、だからブルーノ役は志の輔師匠しかいないと思って。

茂木:今回、後半ですごく長いセリフがあるじゃないですか。あれはあてがきに近いんですか?

西野:あてがきです。志の輔師匠の声はちょっと楽器的で音楽っぽいなと思ったんですよね。なので、志の輔師匠のあの声に合うようにセリフを考えました。言ってしまえば、あれは“口上”ですよね。
普通だったらああいうのは音楽に任せるんですが、『えんとつ町のプペル』は志の輔師匠の口上で締める、という。でもあれがグッと来るんですよね。

茂木:僕は西野さんと知り合って本当に長いけど、ずっと言ってたことが実現して、心から偉いなぁ、と。年下ではあるけど尊敬する。

西野:いやいや、やめてください(笑)。

茂木:既に多くの方が観ていらっしゃると思うんですけど、これから観る人に向けて…。

西野:もともとは“自分の自叙伝”とか、“挑戦する人を応援する”というテーマで作った作品ではあったんですけど。
黒い煙に覆われた町。夢も希望も持てないという、そんな中でも、煙の向こうに何かあるんじゃないかと希望を持ち始める主人公たちがいる、というこの背景が、現代、つまりコロナ禍と全く重なって。今ももう、“何もやれない”という状況になっているじゃないですか。
でもここで夢とか希望とかを捨ててしまうと、僕達はもう息もできないので、なのでそういう人たちに向けてエールとなるような作品になったな、という感じがしますね。

茂木:ぜひ皆さん観てくださいね!

西野:はい、ぜひ!

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映画『えんとつ町のプペル』公式サイト


西野えほん(キングコング)(@nishinoakihiro) Twitter


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