Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.462 俳優 佐藤二朗さん 映画「さがす」

2022年02月05日

佐藤さんは、1969年、愛知県のお生まれ。

圧倒的な存在感で、映画、ドラマ、舞台で様々な役を演じていらっしゃいます。

俳優のほかにも、脚本家、映画監督など、マルチにご活躍中でいらっしゃいます。


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──20年前の縁

茂木:今回は、いつものスタジオを飛び出して、映画の完成披露試写会の前にお話を伺いました。
佐藤さんが主演を務めた、映画『さがす』は、指名手配犯を見かけた翌朝に姿を消した父親と、その父親を必死に捜す娘の姿を描いた、衝撃作です。佐藤さんはこの映画で、その失踪する父親、原田智役を演じていらっしゃいます。
この『さがす』の片山慎三監督とは、ずっと前に現場が一緒だったとか。

佐藤:20年前に、BS-TBS(当時はBS-i)の『アイノウタ』という池内博之君が主演のドラマがありまして、それに僕が出てて。その時に、スタッフと言うよりは“お手伝い”、右も左も分からない、“人と言うよりはほぼ猿”と言ってもいいぐらいの、21歳の面白いあんちゃんがいたんですよ。

茂木:はい(笑)。

佐藤:ただそいつは会話や感性がすごく面白いと思ったんで、ちょっと偉そうなんですけど「お前面白いな」みたいに話していた記憶はあったんですけど。それが、片山だったんですね。

茂木:今回の片山監督の脚本は、ほとんど佐藤さんへの当て書きだったみたいですね。断られてたら監督も困っていたと思うんですけど、手紙を受け取られた時にはもう「やろうかな」と思われたんですか?

佐藤:そうです。『岬の兄妹』という映画があって、それはある監督が自腹で撮ったと。それが国内外で非常に衝撃を与えているということは知っていて、見なきゃと思っている矢先に、ある日急に手紙が来て、「『アイノウタ』でご一緒した片山です」と。

茂木:そこで結びついたんですか。

佐藤:そうです。僕はその『岬の兄弟』の片山監督が、あの“人と言うよりはほぼ猿”の片山とは思わなかったんですよ。その手紙で「あ! あの片山が、『岬の兄弟』の片山監督か!」と言って、その手紙の後に「『岬の兄弟』の後、商業デビュー作品になる作品の初稿の台本を送るので、その主演を是非二郎さんにやって欲しい」、「二郎さんに当て書きをした」と。
その手紙を読んで、まずは監督の熱意が伝わり、そして実際にその本を読んでみたらまず純粋に面白かったのと…。このどこにでもいそうな中年男が、誰にでも起こり得るけど誰も起こって欲しくないような過酷な状況に追い込まれるという。この役を引き受けると、当然俳優自身のメンタルも相当きつくなるだろうと思ったので、勇気も必要だったんですけど。そんなことを軽く凌駕(りょうが)するぐらい、「この原田智という役を演じたい」と思わせてくれる本だったので、ほぼ即座に「やるよ」というお返事をしました。

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──低予算でじっくり撮る

茂木:佐藤さんのように、脚本も書き、映画監督もする方から見て、今回の片山監督の現場はどんな感じでしたか?

佐藤:まず、俳優をやる時には、監督をやっていることも全く忘れています。違う筋肉…全く違う脳の回路を使うので、監督をやることは忘れるんですけど。
今回非常に印象的だったのは、片山監督は、韓国映画のポン・ジュノ監督の下にも助監督として付いていたというのもあるかもしれないけど、片山が実際に言ってたのは、「日本ほどテイクを重ねないものはない」「他の国では何回もやる」と。日本でテイクを重ねないのは何でかと言うと、日にちがないからゆっくりやってる場合じゃない。で、何で日にちがないかと言うと、予算がないからなんですけど。
片山は偉いなと思ったのは、それを、自分が商業デビューする初監督の時にはじっくり撮りたいので、1日2ページぐらいしか撮らないんですね。だから、日にちをすごく掛けたんです。ちなみにこの映画は2か月掛かってるんですね。2か月を日本映画の感覚で言うと、大作です。でも『さがす』は低予算。その代わり、人件費を削減するために、スタッフをもの凄く少なくしたんですよ。
片山は「スタッフの負担が非常に大きいので、もうこのやり方はしないと思う」みたいなことを言っていたんですけど、『さがす』に関しては、とにかく何テイクも何テイクもやるんですよ。
僕がやった原田智という役は、非常に過酷な状況に追い込まれるので、メンタルもきついじゃないですか。泣き叫ぶようなシーンもあるわけですよ。僕は「俺はベテラン俳優で、過去にこんなことをやってなかった」と言ったら、自分の可能性を狭めることになるので、積み上げないことを信条にしてるんです。だからその片山のやり方にもすごく賛同してやるんだけど、「ただ…発狂するようなシーンとか泣き叫ぶシーンを何十テイクもはきついよ」と言ったら、片山が「大丈夫です、二郎さん。分かってます。“5回しかやりませんから”」。

茂木:(笑)。

佐藤:「いや、5回はやるんかい!」と思って。そして、実際に5回はやってましたから! しんどいですよ!

茂木:しんどかったですか(笑)。

佐藤:いや、正直しんどかったです。ただ、やっぱり本当に片山は偉いなと思うのは、「自分はこういうやり方だからスタッフを少なくしてでも、こういう座組を作る」と言って、それをちゃんと共鳴して支えたプロデューサーも偉いと思うし、それをやり通した片山もすごく美しい話だと思うし。だから、そういうところでできたのは、僕にとって非常にかけがえのない経験・財産になりました。

茂木:この『さがす』は、日本映画の歴史に残る作品になるんじゃないかな、と僕は予感してるんですが、その主演をやられたというのは、今までの人生を振り返ってどうですか?

佐藤:僕はそのことも嬉しいし。やっぱり「人生ってだからやめられないな」と思うのは、20年前の“猿みたいな奴”から、まさか20年後にこんなに色々刺激を貰えて、勉強させて貰えて、と思わないじゃないですか。それが、お互いに頑張ってこの業界にいて、それで俺に声を掛けてくれて、手紙を書いてくれて、こういう形で皆さんに観て頂けるというね。「年取るのも悪くないな」と思ったりしてね。

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茂木:「人生捨てたもんじゃないな」と。

佐藤:はい、そう思いますよね。

茂木:この『さがす』を、全ての映画ファン、そしてまだ映画を余り普段観ていない人にも観て頂きたいんですけど、『さがす』について、一言お願いします。

佐藤:本当にちょっと重そうで、観るのに体力いるな、という意見も聞くんですけど…。もちろん人間の業とかそういう暗部を描いてはいるんだけど、同時に、普通にエンターテインメントとしても、先が読めないスリリングな展開とか、語弊があるかもしれないけど、楽しめる作品だと思います。茂木さんがおっしゃった通り、映画がもの凄く好きな人も、普段あんまり映画を観ないなという人も、本当に色んな人に刺さり得る作品だと思うので、観て頂きたいなという感じです。

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映画『さがす』
2022年1月21日(金) テアトル新宿ほか全国公開中
©2022『さがす』製作委員会
配給:アスミック・エース


■プレゼントのお知らせ

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映画『さがす』の劇場鑑賞券を、2組4名の方にプレゼントいたします。

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一緒にを添えていただけると嬉しいです。

尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。



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佐藤二朗 Twitter (@actor_satojiro)


佐藤二朗 オフィシャルサイト


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