Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.471 俳優・タレント サヘル・ローズさん 「当事者の生身の声を聞いて、背景を知って欲しい」

2022年04月09日

サヘル・ローズさんは、1985年、イランのお生まれです。

7歳まで、イランの孤児院で過ごし、8歳で養母とともに来日されます。

高校生の頃から芸能活動を始め、様々なタレント活動のほか、
俳優として、映画や舞台、テレビドラマに出演し、多方面でご活躍中です。

芸能活動以外では、国際人権NGOの「すべての子どもに家庭を」の活動で、
親善大使を務めていらっしゃいました。

また、私的にも援助活動を続け、公私にわたる福祉活動が評価され、
アメリカで「人権活動家賞」を受賞されていらっしゃいます。


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──子供が育つ環境の大切さ

茂木:僕はサヘルさんのTEDxKyotoのスピーチを聴いてすごいなと思って。

サヘル:嬉しい! 観てくださったんですね。

茂木:ちょっとお話しになったことをご紹介して頂いていいですか?

サヘル:ありがとうございます。私が常に取り組んでいる、社会的養護下にいる子供達の現実、実情を、TEDでお話しさせてもらっていて、まさに自分の生い立ちと重なる部分があったんですよね。実は、日本でも児童養護施設で生活をせざるを得ない子供達というのはたくさんいて、もしくは里親さんのところに引き取ってもらっていたり、いわゆる4万5千人以上…今だと4万7千人以上かもしれないんですが、その子供達が今、社会的養護下で生活をしています。
私はあくまでも施設を否定したいわけではないんですが、施設で育ってしまうとどうしても一対一の関係が生まれないので、子供の時から安心感だったり、心の状態を整えることができません。ですから、私は、なるべく子供は施設ではなくて家庭に行って欲しいんです。
TEDでは、私がお母さんに引き取ってもらったことによって、生きやすさ、自分自身を見つけることができたけれども、そうなれない日本の子供達の現状に気づいて欲しくて、そして私が、後にイランでいつかは養護施設“サヘルの家”というのを作りたいという目標があったので、そういう子供達の代弁者、そしてロールモデルになって欲しいという気持ちを込めて、お話しをさせてもらったんですよね。

茂木:あのスピーチは、グローバルなスタンダードでの素晴らしいTEDトークだと思いました。

サヘル:ありがとうございます。子供は、0歳から5歳までのあの期間にどんな環境で育つかが、すごく重要なんです。戦禍の中で生まれる多くの子供達が抱えることなんですが、生まれ育った場所を何度も引き抜かれて、また新しい土地に植え付けられるんですけど、そのたびに心の部品が一個ずつ取れてしまうんですよ。
私の場合、36歳になって大人にはなっているんですが、今も、自分の中に存在しているインナーチャイルド…あの時施設の中で作ってしまった自分の唯一の友達、自分を置き去りにしない信頼できる中身の人間が、いまだに存在しています。自分の中に作ってしまったインナーチャイルドは、今も、時に暴れるんですよ。
私はよく、「サヘル、幸せになっていいんだよ」と言って貰えるんですけど、幸せになろうとすると、自分の中の小さな子供がそうさせたがらない。なぜなら、私が幸せになってしまった時に、その子が置き去りにされてしまうという怖さを抱えるので、時々私自身が自分を傷つけてくるんです。

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──積極的に現場に関わって欲しい

茂木:サヘルさんのご活動を見ていると、“どんな立場の人でも、人間として尊重される”ということをすごく大事にされていると思うんですけど。国会の衆議院でも証言されたりしたじゃないですか。国会に行って国会議員の方にお話しされて、いかがでしたか?

サヘル:政治家の方々を目の前にして、訴えかけたかったんですよね。これは言葉を選ぶのが難しいんですけれども、どうしても皆さんは書類上でデータを見るんですよ。でも、正直、データが全てじゃないんです。生身の声を聞いてもらって、当事者たちの、震える、絞り出す言葉が一番リアリティがあると私は思うので、政治家の方々にも当事者の声を聞いて欲しかった。だからこそ、あの場で話させてもらえることによって、まずデータや議論よりも先に、“私達に何が必要で、どういった想いをしているか”を知ってもらうということが必要なんです。
日本に限らずイランでもそうなんですが、現代社会で、きっと私達人間に必要なことは、当事者のその人たちの背景を知ることです。背景を知るためには、その人たちの声を拾い上げることがすごく大事で、共存するためには“あえて率先して関わること”がとても必要です。私はそのお話をさせてもらいながら、政治家の方々に少しでも知っておいてもらって、そこから少しでも法律が変わってもらえたらな、と思っていたので、そういう機会がもっと増えたらいいなと思います。
これはたまたま私が頂いたきっかけだったんですが、私は、これを日本の施設で育った、次世代を担うロールモデルとなる子供達に、託したいんですよね。

茂木:本当にすごいなと思うのは、サヘルさんご自身も養護施設に訪問する活動をされていらっしゃるじゃないですか。

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サヘル:そうですね。率先して関わりたいなと思っているので、“現場を見たい”というのがまず一つと。
施設によっては、支援が行き届いているところと行き届いていないところで差が酷いんですよ。差が酷いのにも関わらず、子供達のリアリティある声が外に出て来ない。隠そうとする大人も、中にはいます。

茂木:問題が起こらないように、という感じなのかな。

サヘル:そうです。そして、問題が起きているのにそこに蓋をしてしまう社会が今そこにあるので、外にある私達がそこに行って中にいる子供達と関わることで、その子たちが置き去りにされないようにしています。
それと当時に、その子たちは後に退所するわけですよね。普通に家族がいれば、「大学に行きたい」「免許が取りたい」「資格が取りたい」…誰かにサポートしてもらえるじゃないですか。退所した時に、彼らには、彼女達には、サポートしてくれる人たちがいないんですよ。だから施設を退所した7割が、社会復帰できていないんです。保険も持ってないんです。

茂木:まずいよねぇ。

サヘル:まずいんですよ。生活保護で生活している子達もいるんですよ。
私は、彼らに一番必要なことは、メンタルケアだと思っているんです。やはり、6割近くが虐待によって施設に入ってしまっているんですよね。その虐待してしまった親を責めることは正解じゃないと思うんです。
誰かを悪者にすることはすごく簡単なんですよ。敵味方を作ることで仕組みはすごく分かりやすくなるんですけど、でも双方が被害者であり、双方によってお互いの家族が奪われてしまい、武器を持って戦場に駆り出される人達にも、相手に銃を向けている恐怖を皆抱えているんです。ですから、悪を作るのが解決策ではなくて、そうさせない社会のために加担しないことを、それぞれの大人達が意識を持つこと。
そして、現代社会に必要なことは、大人のメンタルケアです。日本の中では特にそうなんですが、はけ口がない。なぜなら、精神科医にかかることが日常的じゃないんですよ。外国はメンタルケアが日常の一部じゃないですか。社会もそれを認めているし、誰かに話を聞いてもらえることは必要なことなんです。でもいざ日本で「私は(精神科に)行きました」(と話すと)、「あ、この人はちょっと病んでるのかな。病気なのかな」…。

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茂木:そう見られちゃうところもある、ということですよね。

サヘル:はい。そう見られてしまうことを恐れてしまったり、薬を処方されることで傷つく人もいるので、そうじゃないんですよ、と。それがもうちょっと一般化することで、生きづらさを抱えている人たちが歩み寄れる、そしてはけ口がある社会であって欲しい、ということを常に伝えたいと思っています。

茂木:素晴らしい…!

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■プレゼントのお知らせ

番組でご紹介しました、講談社より発売中のサヘル・ローズさんのご著書
『言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”』に、
サヘルさんの直筆サインを入れて3名の方にプレゼントいたします。

ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。

茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。

尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。



サヘル・ローズ 公式サイト


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●言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”/ サヘル・ローズ (著)
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SDGs学部 ミライコード(TOKYO FM)
↑サヘル・ローズさんが担当する、
 4/3(日)朝7:00〜スタートの新番組はこちらです!


「一人一人の子に愛そして夢を」サヘル・ローズ | TEDxKyoto 公式サイト