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Dream HEART vol.620 お笑いコンビ・ガレッジセール、映画監督 照屋年之(ゴリ)さん 映画「かなさんどー」

2025年02月15日

今夜ゲストにお迎えしたのは、映画『かなさんどー』の監督を務められました、お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリさんこと、照屋年之さんです。

照屋年之(ゴリ)さんは、1972年、沖縄県のお生まれ。
1995年にお笑いコンビ「ガレッジセール」を結成し、2006年から映画監督のキャリアをスタートされました。

初監督作品となる、短編映画『刑事ボギー』でショートショートフィルムフェスティバル〈話題賞〉を受賞され、2009年には、『南の島のフリムン』で長編監督デビューを果たされます。

そして、2018年に制作した映画『洗骨』は、モスクワ国際映画祭、上海国際映画祭などの映画祭に出品され、日本映画監督協会・新人賞を受賞。

そのほか、2022年には沖縄が日本に復帰した1972年を舞台にした小説『海ヤカラ』も出版されました。

映画監督、芸人、俳優などなど、幅広くご活躍中でいらっしゃいます。


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──映画に宿る母の記憶

茂木:来週2月21日から全国で公開の映画『かなさんどー』なんですけどれも、なんと、これは6年ぶりの長編作品になったんですか。

ゴリ:やっぱりコロナ禍を挟んだので。『かなさんどー』以外の脚本も上がっていて、「映画を撮りたい」という方向では動いていたんですよ。でも、結局大人数の人が動くということで許可がなかなか下りずに、それでズルズルと6年という月日が経ってしまって。

茂木:この『かなさんどー』というのは、沖縄の言葉で『愛してる』という意味なんですか?

ゴリ:そうです。『愛してる』とか『愛おしい』とか。

茂木:最上級の表現なんでしょう?

ゴリ:もう、今の若い子達は『かなさんどー』という方言では使わないんですけれども。

茂木:改めて、今回の作品『かなさんどー』のご紹介をしたいと思うんですけども。
こちらの作品なんですが、沖縄を舞台に豊かな風土と文化、そしてゴリさんが持つ独自の死生観が織りなす「寛容のこころ」が溢れる、夫婦と親子の愛おしさを描いたヒュ―マンドラマです。
「最愛の妻・町子を失った父・悟が年齢を重ねるとともに、認知症を患っていることを知り、娘の美花は、7年ぶりに故郷の沖縄に帰省します。美花は、母が亡くなる間際に、SOSの電話を取ることのなかった父親を許せずにいるが、生前に母がつけていた日記を見つけ、母の想いを知り、ある決意をする。」…というストーリーなんですけども。
僕、やられました! これはずるい! 冒頭のシーンから、すごい仕掛けをしてますよね。

ゴリ:いや、映画でミスリードしたかったんですよ。『ユージュアル・サスペクツ』までいくと言い過ぎですけれども、ミスリードで「この女の子は、果たして何が目的なんだ?」と。

茂木:だって、思いましたもん。セリフがあったじゃないですか。「遺産が目的なんでしょう?」とか。

ゴリ:「このおじいさんの財産を狙ってるのかな?」と思いきや、いや、実は…、と。

茂木:監督、そこから先は…。だけど僕ね、前作の『洗骨』も思いましたけど、最も悲しい感動的なところで、絶対に笑いを入れ込んできますもんね。

ゴリ:やっぱり、そこは意識してるんですよ。僕自身がお笑いの世界に30年片足を突っ込んでいますので、「ただ感動する」とか「泣ける」というのでしたら、他の監督でもいくらでも撮れると思うんですが、そこに笑いを持ってくるか、というのは、やっぱり僕が撮る意味もあるのかなと思って、意図的にやっているんですよ。

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茂木:やられましたよ。もうすっかり騙されて、泣いてしまいましたよ。

ゴリ:嬉しいです。

茂木:監督は沖縄ご出身で、沖縄の男性と女性の関係…女の人がちょっと強いと言うか、そういうものもこの映画には反映されているんでしょうか。

ゴリ:典型的な男は飲兵衛で、遊び人で、女性は働き者で。みたいなことを、よく沖縄の夫婦では例えられるんですけれども。うちの親父とおふくろはこんな感じだったのかもしれないです。

茂木:え? そうなんですか(笑)。

ゴリ:はい。まさに書き終わって気づいたんですけれども、「これはイメージ的に、うちの親父が浅野さんで、うちの母ちゃんが堀内さんだな」と思ったし、実際に、一番最初に唇を真っ赤に染めていくアップのシーンがあるじゃないすか。あれは、僕の母親の唇(と同じ)なんです。
僕が小さい頃から、母親は化粧台の前に立って、絶対に真っ赤な口紅を使うんですよ。しかも口紅を直接塗るんじゃなくて、絶対1回筆に塗って、唇を真っ赤に縁取っていくんです。縁取っていって、そこから空いているところを真っ赤に塗り潰していく、というのが、小学生なから気持ち良かったんですよ。器用に塗っていくし、真っ赤に染まっていく唇を見ていて気持ち良くて。
どうしてもあれをやりたくて、映画のシーンで印象的に使わせてもらったんです。

茂木:こだわりのあるシーンなんですね。
ゴリさんご自身のお母様とお父様の関係というのも、やっぱり投影されているんですよね。

ゴリ:そうです。実際、母ちゃんが亡くなって遺品整理をしていた時に、うちの親父との日記が出てきたんです。もう書いている文章が、僕らが知らない乙女なんですよ。そういうのも、無意識にこの映画に使っているんですよね。

茂木:この映画は、「親の死に目に会う・会わない」ということが主要なテーマになっているんですけど、ゴリさんご自身も親御さんとの別れというのがなかなか大変だったそうですね。

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ゴリ:そうです。特にうちの母親は闘病が長くて、もう10年ぐらい入退院を繰り返した中だったので、そういう部分では、「死に際はかわいそうだったな」と思いながらも…。
『洗骨』という前の作品の話になってしまうんですが、『洗骨』を撮るきっかけになったのも、母親のお通夜が2日続いた、という理由なんですよ。「母ちゃんと揉めた時もあったけど、やっぱりこの人が産んでくれたから、俺の人生があるんだよな。ってことは、母ちゃんはばあちゃんが産んでくれたから俺がいるんだよな。ばあちゃんはまたばあちゃんがいて…」となってくると、命の繋がり…要するに、沖縄戦を経験したりだとか、その前の前も何万年前から生きることを諦めなかった先祖のバトンタッチのお陰で、今の俺がいるんだと思ったら、その長い全部が繋がった、一体の人間となった時に、『洗骨』という脚本が書き始められたんですよね。
そういうことも色々含めて、やっぱり親のお陰でこの『かなさんどー』の脚本が書けたな、という感じはしましたね。

茂木:皆さん、この映画は本当に素晴らしい映画です。恐らく皆さんは、「ガレッジセールのゴリさん」のあの面白いイメージがあるので、こんな本格的な、と言ったら変ですけど。これは本当にいい映画ですよ。

ゴリ:嬉しいです。本当に知らずにただ観た人は、「照屋年之っていう監督が撮った映画なんだ」、「面白かったな」で終わると思うんです。それが僕だということに、僕は気づかなくてもいいと思うんですよ。もうとにかく「この映画が良かった」と思ってくれたらいいです。

茂木:是非、皆さんにご覧頂きたいと思います。
監督、色々お話を伺ってきたんですが、この映画をこれから観る方に、何かメッセージがありましたらお願いします。

ゴリ:人を許せないとか、どうしてもあの人に「ごめん」と言えないとか、「やっぱり悪かった」と言えないとか、ちゃんとさよなら言えなかったとか、色んな人間関係があると思うんですが、この映画を観た時に、たぶん誰かの顔が頭に浮かぶと思います。その浮かんだ人に是非とも電話をかけてあげたり、「会おう」と言ってくれたり、会う時間を作ってくれたら、少しでも今よりは前に進めるんじゃないのかな、と思ってもらえるような90分になっておりますので、あなたの人生の90分を私の映画にください。

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映画『かなさんどー』(@kanasando_movie) / (旧Twitter)公式アカウント


映画『かなさんどー』公式サイト


ゴリさん (ガレッジセール)(@Teruyatoshiyuki) / (旧Twitter)公式アカウント


ガレッジセールSTAFF (@info_garagesale) / (旧Twitter)公式アカウント


●映画『かなさんどー』予告編 - YouTube