
宮崎市の映画制作会社<m20>によるこの映画は、監督の籾木良作さんをはじめスタッフのほとんどが宮崎の方という、まさにウェルメイドの映画です。
タイトルの寒川とは、宮崎県西都市の山深い地にあった、ある村の名前。
最盛期には約230人が暮らしていたという寒川村。その後人口は減少し、1989年に最後の6世帯13人が村を去り、廃村となりました。この時、移転の補助金を受ける条件は、「家のかまどを壊して畳を上げ、二度と住めなくする事」でした。人々は泣きながらかまどを壊し、我が家を後にしたといいます。
65歳以上の人が人口の50%を占め、共同生活が出来なくなった集落の事を、限界集落といいます。日本では、現在までに1700以上の限界集落が廃村となり、2015年までには、更に2100ヶ所以上の集落が姿を消すだろうと言われています。
昨年の春クランク・インしたこの映画では、寒川村をはじめ、各地の限界集落や自然災害で失われつつある古里の風景、そしてそこに暮らす人々の表情を追いかけてきました。
そのフィルムに焼き付いているのは、かつて自然の中に暮らし、自然と共存してきた村からの、時間を超えたメッセージです。
僕も実際に寒川村を訪れてみたんですが、人の手によって作り出された集落が、山の斜面に張り付く様に残されていて、今まさにひっそりと、山へ還って行こうとしていました。しかし何よりも胸を打たれたのは、かつてそこに住んでらっしゃった方々とそのご家族が、世代を超えて今もその地を訪れ、ふるさととして慈しんでいらっしゃるという事でした。
ドキュメンタリー映画「寒川」は、今月から全国各地で上映会が行われ、東京では1月22日、なかのZEROで上映会が行われます。

