
あれから10年、復興が進む福島を行く~カブトムシの森の再生物語、虫の楽園『ムシムシランド』をたずねて
全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。
今日のテーマは、「あれから10年、復興が進む福島を行く~カブトムシの森の再生物語、虫の楽園『ムシムシランド』をたずねて」。
カブトムシ1000匹!!YouTuber鰐さんと「ムシムシランド」を行く![「Hand in Hand」取材動画(福島県田村市)]
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番組の冒頭で聴いて頂いたのは、去る8月中旬に、福島県田村市の「ムシムシランド」を訪ねた時の子供たちの声でした。カブトムシやクワガタを間近で見て触って、興奮した様子が伝わってきました。
“日本で唯一の虫の楽園”と呼ばれる、福島県田村市の「ムシムシランド」。田村市はかつて葉タバコの生産が盛んな町で、葉タバコの肥料となる腐葉土に、沢山のカブトムシの幼虫が育っているのを発見したのがきっかけで、この「ムシムシランド」は誕生しました。
まずは施設の概要について、施設長の吉田吉徳さんに、お話を伺いました。
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高橋:お子さんたちたくさんいらっしゃってますね。
吉田:そうですね、おかげさまで今年はコロナ禍で心配したんですけれども、逆に福島県内からたくさんのお客様に来ていただいて大変賑わってますね
高橋:広さはどれくらいあるんですか?
吉田:まず入り口のところにあるのがカブト屋敷。そこには世界のカブトムシ、クワガタの標本などが150種類くらい展示してあって、そこから山道を歩いていただいて100mくらい、その奥にカブトムシ自然観察園、通称カブトムシドームと呼んでいるんですが、一番高いところで20m、幅が20m、奥行が40mあります。800平方メートルの広さがあります。しかも、高さ20mと申し上げましたが、元々あったコナラの木をそのまますっぽり覆っているという形になっています。
高橋:じゃあこのムシムシランドのコンセプトとしては、自然をありのまま楽しんでもらうみたいな感じなんですかね。
吉田:そうです。都会ではなかなか味わえない昆虫採集気分みたいなものをこの自然観察園のなかで存分に体験してもらおうということと、アンケートを取っているのですが、子供が虫を触れなかったのに、ここに来て虫に触れるようになりましたとか、お母さんが、子供が虫とすごい楽しそうに遊んでるのを見て、私も虫について勉強しますとか、そういうきっかけにもなっているので、非常に私達は嬉しいですね。
平成元年にオープンした福島県田村市の「ムシムシランド」。昆虫ファンの間では“聖地”として愛されてきましたが、2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故の影響で、当時、休園を余儀なくされるなど、被害を受けました。しかし現在では、福島県の主要都市の放射線の空間線量率も日本や世界の主要都市とも変わらないレベルに落ち着き、「ムシムシランド」も再開しています。
震災直後の影響と再開までの経緯なども、吉田施設長に聞きました。
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吉田:ここは原発から30km圏内に入りまして、一時、緊急時避難準備区域ということで、お子様とお年寄り、それから妊婦さんが立ち入ってはいけませんよというエリアに指定されてしまったんですね。それでその年は当然休園を余儀なくされたというふうなことになっています。
高橋:ただ、翌年からは再開されているんですよね。
吉田:はい。震災直後でも放射線量が距離は30kmくらいだったんですけれども、風向きの関係でこの地域は比較的低くて、高いときでも1マイクロシーベルトくらい。この林の中自体もだいたいが0.6マイクロシーベルトくらい。で、除染をした結果、その年のうちは0.2くらいまでは下がったんですかね。で、今日なんかはここにモニタリングポストありますが、0.09、まあ0.1は切っているというような形で、放射線に対する心配は今はもう無くなったんですが、当時は全く皆さん不安でしたから、心配をして来ない人もいましたし、私達も来てもらうためにはこの放射線量を下げなきゃいけないということで、いろんな方々といっしょに除染なんかもしたという経過もありました。
高橋:カブトムシへの影響ですとか、自然への影響ってありましたか。
吉田:そうですね、ドーム内の土は、表面を全部剥ぎ取ってしまったんですね。というのは、表面にどうしても放射線が積もっているという関係で剥ぎ取ったわけですけれども、そこが本当はカブトムシ寝床だったり産卵場だったりしたわけなんですね。それを根こそぎとってしまったので、今はカブトムシがなかなかその場所で繁殖をしていくというふうな環境ではないというのは事実ですね。で、ここはたくさんのお客さんに来ていただいて、根っこなんかも踏み荒らしちゃってる感じになっているんで、ここはできれば自然に返す形で、別の場所でまた新たにドームを建設したいなというふうなことで考えているんですが、そのきっかけがやっぱり、いろんな方に震災以降知恵を出していただいたり、協力をしていただいたりして、すごく落ち込んでいた入場者数が3年前からV時回復というふうなことで、非常に今やる気になっているところなんですよ。
高橋:人のちからとかみんなの温かさですね。
吉田:はい。でも発信力が非常に弱いんですよ。“ムシムシランド、どこそれ?”・・・これを何とかもっと広い範囲、出来れば日本中に広げたいってなった時に、そんなにお金、宣伝広告費もなくてやってたんですけど、知り合いにユーチューバーのチャンネル鰐さんという方がいらっしゃって、声をかけてみよう、で、ムシムシランドで昆虫採取してもらって、動画あげてもらえないかな?という話があって、で来て頂いたら動画何本も撮ってくれて、5本くらい上げてくれたんですが、一緒に田村市で昆虫採取をやったんですよ。ここ(ムシムシランド)ではないんですけどね。で、市内で昆虫採取をやったら、ミヤマクワガタやノコギリクワガタがばんばん採れまして。で、その動画がなんと1年間で250万回、いまでも再生されているみたいですけど、私たちもびっくりしました。
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震災の翌年の夏に再開した「ムシムシランド」。しかし風評被害もあってなかなか来場者数が震災前に戻らない。そんな中、3年前に実施したある企画展がヒットして、来場者数がV字回復したということでした。それは、放送作家で「福島WAKU-WAKUプロジェクト」総合プロデューサー、鈴木おさむさん監修の「世界三大奇蟲展」。森に住むゴキブリや巨大なヤスデ、サソリそっくりの虫など、世界のキモ可愛い(?)虫たちが勢ぞろいするという企画展です。
これをYouTubeで発信して、大ヒットにつなげたのが、生き物系人気YouTuberとして日本トップクラスのチャンネル登録者数を誇る、「ちゃんねる鰐」の鰐さんでした。
ちなみに「ムシムシランド」エントランスにある「カブト屋敷」には、ヘラクレスオオカブトや100種類を超える世界の昆虫標本が展示されているほか、そんな“奇蟲たち”がこの夏も展示されていました。Hand in Hand一行も見学しましたが、それはもう・・・(写真も撮りましたが掲載は控えますww)
そんな「ムシムシランド」の主役は、カブトムシやクワガタといった人気昆虫のエースたち。しかしその魅力を伝えるのに、高橋万里恵ひとりでは心もとないというとこで、今回は特別に、「ムシムシランド」の救世主でもある「ちゃんねる鰐」の鰐さんがサポートに来てくださいました!
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高橋:私達は今日はじめてムシムシランドに来たんですが、鰐さんは何回かいらっしゃっているんですよね。
鰐:はい。もう今日で4回目ですね。
高橋:ずばりこのムシムシランドの魅力を教えていただけますか。
鰐:なかなかこの規模のカブトムシドームがある場所って無くて、ここには常時カブトムシが1000匹放たれているということで、いつ行っても大量のカブトムシを見ることができるんですよね。そこがやっぱりいちばんの魅力だと思いますね。
高橋:今日もたくさんのお子さんがどんどん入っていっているのですが、ムシ好きの鰐さんから見て、このカブトムシドームというのは、カブトムシたちにとっては住みやすい居心地がいい場所だと思われますか。
鰐:カブトムシを飼うのにこれ以上いい場所はないんじゃないかというくらい最高の場所だと思います。山の雑木林をそのまま囲っているだけなので、ほぼ自然じゃないですか。普通の虫かごで飼われていたら、人間でいうところのワンルームに住んでいる感じなんですけど、ここは街ごとなので、いちばん住みやすい場所だと思いますね。
高橋:私はちょっと虫が怖いんですよ。そういう方に怖くならないというか、こういうところがいいところだよっていうの、何かあります?
鰐:昆虫、みんな知らないから怖いんだと思うんですけど、よく観察して、あと生体とか調べてみると、けっこうどの虫にも面白い生態とかかっこいいところがあったりして、そういうのを知ると、魅力的に見えてくるんで、ぜひたくさん知って欲しいですね。
高橋:たしかに「知らない」っていうのは「怖い」に繋がりますよね。じゃぜひ中を案内していただいてもいいですか?あっ飛んでるんですけど!あれはなんですか?
鰐:カブトムシの雄ですね。基本的に、雄は特に夜にしか飛ばないんですけど、たまに飛ぶこともあるんですけど、なかなか見ないですね。こんな感じで、入ってすぐカブトムシが見れるくらいたくさんカブトムシが放たれているわけです。
高橋:もしこれ夏休みに自然の中で見つけたら取りまくっちゃう感じですよね。
鰐:取りまくっちゃいますよね。このドーム内のカブトムシ、この柵を超えて入ってしまうのはダメなんですけれども、この辺についているカブトムシとかは捕まえる体験もすることができるので、子供の頃に来ていたら狂喜乱舞でしたね。
高橋:本当そうですね。あ、小さい子が何かで遊んでると思ったらカブトムシ触ってますね!これ大人も夢中になりません?
鰐:大人も本当に童心に帰って夢中になっちゃうんですよ。
体じゅうにカブトムシをつけた復興庁のSさんを見つけて驚く万里恵さん。痛くないのか聞いたところ、“痛くはないけどちょっと匂いがある”ということでした(笑)。“夢ですね”とも言っていましたが、これは虫好きだった元少年のスタッフ一同まさに共感。一匹つかまえるのも大変なカブトムシがこの状態ですもの。こんな体験が出来る「ムシムシランド」。まさに聖地です!
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福島県の東部の町の復興の歩みと「今」を伝える、シリーズ、「あれから 10年、福島の被災地を行く」。今日のテーマは、「カブトムシの森の再生物語~福島県田村市の「ムシムシランド」をたずねて」。カブトムシドームを見学中、若干虫を怖がる万里恵さんに、鰐さんが言っていた言葉、「知らないから怖い、知れば怖くない」は、放射線のことにも通じるキーワードです。放射線についても知ること、知ろうとすることが大切なのだという万里恵さんの感想も印象的でした。
「ムシムシランド」では、地域にもっと昆虫が暮らしやすい森をつくるため、カブトムシやクワガタが大好きなクヌギやイタヤカエデを植樹するクラウドファンディングを実施。多くの賛同を得て、215本の木を植えたということです。これから、より豊かになっていく田村市の自然環境。虫たちや子どもたちで賑わう森に成長していくことでしょう。
自然環境に恵まれた田村市には、ムシムシランドの他にも、およそ八千万年という年月をかけて創られた大鍾乳洞である「あぶくま洞」や、宇宙の雄大さを感じることができる「星の村天文台」などの魅力ある施設もあります。
田村市公式ホームページ
「ムシムシランド」は、残念ながら既に今季の営業を終えていますが、カブトムシやクワガタの「幼虫掘り出し体験」が10月31日に行われるなど、臨時の体験イベントも行っていますので、他の観光スポットと同様に、是非チェックをしてみてください。
「ムシムシランド」オフィシャルホームページ
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プレゼントのお知らせです。今回は、「ムシムシランド」オリジナル、昆虫の絵柄入りマスク、「カブトムシ」と「クワガタ」をセットにして、3名様にプレゼントします。
ご希望の方は、下記のクイズの答えを書いて、メールフォームからご応募ください。
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Q:放射性物質は、時間とともにどう変化するでしょうか?正しいものを選んでください。
①増えていく
②変わらない
③減っていく
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下記サイトにヒントがあります。
タブレット先生と宝探し|タブレット先生の「福島の今」
ぜひ答えの番号とともにメッセージも添えてプレゼントに御応募ください。また今回の感想やご紹介した田村市の皆さんへの応援メッセージもお待ちしています。頂いた応援メッセージの一部は、復興庁の〔Hand in Handレポート〕でも、個人情報を伏せてご紹介させて頂きます。是非たくさんのエールをお待ちしています。
今回の取材の様子は、動画でもご覧頂けます。是非ご覧ください!
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次週の「Hand in Hand」、シリーズ「あれから 10年、福島の被災地を行く」~清流の郷・川内村の自然に癒されて。豊かな自然で知られる水の里、川内村からのレポートをお届けします。来週もどうぞお楽しみに。