
豊肥本線と国道57号線開通にわく、南阿蘇の今
2016年の熊本地震。大規模な山の土砂崩れによって国道57号、JR豊肥本線、そして阿蘇大橋が崩落し、阿蘇への玄関口が長らく不通となっていましたが地震からおよそ4年半で復旧作業が終わり、8月には豊肥本線、そして10月3日には国道57号線が全線で開通しました!
Hand in Handは国道57号線の全線開通にわく、南阿蘇村を取材しました。
JR豊肥本線 黒い車体がカッコいい、熊本と大分をつなぐ観光列車「あそぼーい!」。立野駅では観光客がたくさんホームに降り立ち、その景色を楽しんでいました。
ご案内いただいたのは、みなみあそ観光局の事務局長 久保尭之さん。
「ここ立野駅が阿蘇カルデラの外輪山の切れ目になっているところです。豊肥本線はここから阿蘇に入っていき、右手に噴煙をあげている中岳や阿蘇の五岳を望みながら、左手には外輪山、最後はトンネルをいくつか抜けて、大分の方に抜けていくルートです。
カルデラの淵をぐるっとまわるコースが人気で、移動手段というより、阿蘇のカルデラの中を電車で走り抜けること自体を楽しみに来て下さる方が多いので、豊肥本線が復活して本当に良かったと思っています。」
―――8月8日に復活した豊肥本線、4年半という時間は長かったですか?
「僕自身も沿線上に住んでいるんですけど、立野駅と赤水駅の間に山の斜面の大崩落があって、阿蘇大橋が崩落したのはご存じだと思いますが、土砂崩れの対策工事がすごく難航して、人が宙ぶらりんになって作業してくれたり、夜通し作業してくれて、それで4年半という短い工期で開通することができました。本当に頭が下がる思いです。大崩落のあたりだと崩落した阿蘇大橋の橋げたも見えるので、そういったのも見てほしいなと思います。」
立野駅には、豊肥本線ともう1本、カルデラの南を走る南阿蘇鉄道も乗り入れていましたが、こちらはまだ全線開通していません。2023年夏に全線で開通予定となっています。このように一歩ずつ、復旧がすすめられています。
久保さんの案内で次に向かったのは、立野駅に隣接する、創業明治40年「ニコニコ饅頭」のお店です。店長は4代目、髙瀬大輔さんです。
―――ニコニコ饅頭って名前がかわいいですね。
「先代が、食べてニコニコになってもらえればという気持ちでつけたのかなと思います。お店は明治40年創業で私で4代目です。だから110年は越えたかなー。毎日手作りでつくっています。一口大サイズの甘酒まんじゅうで、こしあん 8個入りです。」
―――地震から4年半で豊肥本線が開通しましたけど、それまでは大変でしたか。
「熊本地震は精神的にきつかったですね。うちは半壊程度でしたが南阿蘇鉄道とJRが不通になって、阿蘇大橋も壊れてしまったのでお客さんが来られない状況になって。店をたたもうかなと思いましたね。それでも地元の人に「がんばるばい」と言われてそれで奮起して。地震から一か月後にはまんじゅうを作りました。それでも客は戻らなかったですね。全く。JRと南阿蘇鉄道と国道が通らないと立野エリアは孤立してしまうんです。人が来ない状況が長らく続いたので。だからこのJRと国道の開通で人が通ることが何よりありがたいことかなと思います。」
―――久しぶりに買いに来るお客様もいらっしゃいますか。
「何回か電話があって、忘れてなかったみたいですね。一本電話いただければホームまで届けますので。」
ニコニコ饅頭は、あったかくてフカフカです。皮はもっちもち。甘酒の甘さで、甘すぎず美味しい! 立野駅前のニコニコ饅頭、ぜひお立ち寄りください!
10月3日に全線開通した、国道57号線。取材したのは9月下旬だったので、阿蘇大橋の崩落した現場はまだ通行止めでした。行き止まりのところにあるガソリンスタンド「丸野石油」に案内されたのですが・・・
久保「国道57号線がいま復旧工事中で目の前にUターンの看板があります。通行止めなので一般のお客さんは来ないのですが、工事車両の給油をして、復旧工事の下支えをしてくださっている丸野石油さんです。そこの次期社長、丸野隆大さんがUターンをネタにしたラップをやっていて(笑)」
―――Uターンをネタにしたラップ?? どんなのですか?
丸野「阿蘇にある店をPR~入れてくれよガソリン満タ~ン みんな目の前でUタ~ン 通れるって思ってた~ん?♪ ってやつです。丸野石油のPVを作ってTwitterやYouTubeであげていて、前向きに乗り越えようって感じでやっています。」
―――辛い状況をなぜ笑いに変えようと?
「当初、他で務めていて地震後にお店に戻ってきたんです。帰ってきたとき絶望感しかなかったんですね。ここが阿蘇観光の主要道路になっていたのでGWなどは大渋滞だったのが、全くみれなくなったのが寂しくて。それで前向きにPRした方がいいかなと思って。このPV作ってTwitterにアップしたら、このPVを見て翌日から応援のために給油してくれる人が来てくれるようになりました。本当にありがたいです。」
―――いよいよ国道57号線の開通ですけど。
「やっとまたたくさんの車が通ってくれるとうれしいなと思いながら待ってました。来年、新阿蘇大橋が開通するときに第二弾のPV出したいと思いつつ、歌詞が出てこず。本当はこの国道開通と同時に作りたかったんですけど、私の実力不足です(笑)
―――これまでGSに寄る楽しみを考えたことなかったけど、阿蘇に来たら丸野石油で給油していこうという楽しみができました!
「ありがとうございます。阿蘇をより楽しんでもらえるよう案内ができたり、そうやって阿蘇を盛り上げるのに貢献できるようなお店にしていきたいと思っています!」
丸野石油は、ご家族で経営されています!
「建設中の新阿蘇大橋、峡谷の向こうに57号線、また崩落現場の見える場所に来ています。阿蘇大橋の大崩落で大学生が一人亡くなりましたが、復旧工事が大規模なものでどうしても4年半という時間がかかってしまいました。その下のJR豊肥線と国道57号線がようやく通りました。悲しかった記憶もありますが、むしろそれ以上に期待感も感じられるんじゃないかなと思います。」
―――崩落した阿蘇大橋のすぐ近くに新阿蘇大橋がかかるのですよね?
「そうです。前よりも強く、地震にも強い橋として復旧しますので観光の面でも期待したいです。峡谷でこちら側と向こう側が寸断されていたのが、ようやく1つずつ 長陽大橋、新阿蘇大橋、そして南阿蘇鉄道と徐々に復旧してきています。」
―――観光で訪れる方も、57号線を通りながら、また新しくできる阿蘇大橋を通りながら元あった阿蘇大橋の傷ついた部分も見られますよね。
「単純に移動するという以上に、ここをあえて通るということで地震の被害の記憶や、それでもやっぱりここに住みたい人の意志を感じてもらえるんじゃないかな。そういう意味でも期待しています。」
10月3日、国道57号線の開通に合わせて再び南阿蘇を訪れた高橋万里恵さん。
「震災から4年半たって・・ 道が通ることはもちろん外から人が来るきっかけにもなりますし、地元の人にとっても復旧という意味で“道”ってすごく意味のあるものなんだなと感じました。地震で崩落した阿蘇大橋の橋げたを見ることができるし、その一方で新しい阿蘇大橋がどんどんできている姿も見ることができます。着実に復興に向けて進んでいることが感じたられるそんな道だなと感じました。また当日丸野石油で給油もしたんですが、「この渋滞の景色を待っていたんです、最高の景色です!」とニコニコの笑顔でした。こっちまでぐっと来てしまいました。」
新阿蘇大橋の開通は、2021年3月を予定しています。
◆関連リンク先
立野駅前「ニコニコ饅頭」
南阿蘇「丸野石油」